スティーブ・ムーアハウス 少将
英国海軍部隊開発部長 兼
海軍司令部艦隊航空部隊少将
一国が保有し得る軍事能力のうち、空母打撃群ほど広範囲で、順応性、即応性を兼ね備えたものは他にありません。空母打撃群は真の戦略的な能力であり、私は2021年に初の英空母打撃群の派遣を率いたことを誇りに思います。
200日以上に及ぶ航海の間、英空母打撃群は90万キロを超える距離を航行し、飛行時間は4,700時間を超え、40を超える国々と共同訓練を実施しました。これは英空母打撃群が展開可能な大規模でグローバルな一連の作戦であるだけでなく、空母打撃群の作戦のための各国の力の結集を最も明確に示すものです。本派遣の成功は、世界中の最も緊密な同志国と達成した協力と統合のうえに成り立っています。つまり、なるべくして国際性ある派遣となったのです。そして英空母打撃群に対する日本の多くの支援があったからこそ、今回の派遣が実現したと言えるでしょう。
空母「クイーン・エリザベス」は1997年以来、初めて日本に寄港した英国海軍空母であり、随伴艦6隻とともに日本の各港に寄港し、水中、海上、上空での訓練を実施しました。まさに日英間の密接な関係を示す素晴らしい実例となったのです。しかし、これらの関係を当たり前のものと捉えてはいけません。同志国が今後も足並みを揃え、国際規範を維持し、地域に平和と安定をもたらすためにシームレスに活動し続けるためには、常に目を向け続ける必要があるのです。英空母打撃群の派遣は任務を完遂しましたが、これで終わりではありません。これは序章の終わりに過ぎず、インド太平洋地域への継続的プレゼンスの第一章の始まりを表すとともに、平和を維持し、「法に基づく秩序」を破壊し阻害しようとするものを抑止するため、パートナー国や同盟国と緊密に協力していくという英軍の軍種の垣根を越えた願いを告げるものとなったのです。
2021年5月、ポーツマスを出発する空母
「クイーン・エリザベス」
空母「クイーン・エリザベス」艦上にて、
空母打撃群を指揮する筆者
同志国とともに戦闘能力を示す
英空母打撃群と英米空母航空団
写真はいずれも英国防省提供 Ministry of Defence, UK