航空自衛隊航空幕僚監部(東京都新宿区)
2等空佐 伊藤 友紀(いとう ともき)
2021年8月末、アフガニスタン・イスラム共和国の首都にあるカブール国際空港において、在外邦人等の輸送にかかる任務に従事しました。私は、C-2輸送機の飛行隊で勤務した経験もあることから、派遣前、米軍機の輸送機に群がる民衆のニュースが報道されているのを見て、同じ輸送機の操縦者として「米軍の操縦者は過酷な判断を迫られているな、自分ならどうするだろう」と考えていました。すると、その数日後、現地への派遣を命ぜられました。その頃にはカブール国際空港内は落ち着きを取り戻していたので恐怖心はなく、重大な任務の一端を任されたという気持ちに胸が高鳴ったのを覚えています。
現地では輸送機の運航に必要な調整を米軍と空港内で行いましたが、自衛隊機も含め各国の輸送機がひっきりなしに離着陸を繰り返しており、十数万人規模の空輸がいかに困難な任務かということを肌で感じました。また、カブール国際空港の敷地内で見た、わずかな荷物だけを手に祖国を離れるアフガンの人々の安堵と不安が入り混じったような顔と、彼らに手を引かれながら飛行機に乗ることを無邪気に喜んでいるような子供達の顔に強い印象を受けつつ、現地での活動に尽力しました。
そんな中で、日の丸を付けた自衛隊機が日本からアフガニスタンまでの約1万キロの距離を飛行し、カブール国際空港に着陸した時には、日本人として誇らしく思うとともに、邦人等を載せて飛び立った時には、その存在を非常に心強くも感じました。
このようなことは起こらないことが一番良いことですが、「いざ」というときには、さらに困難な任務でも完遂できるよう、心・技・体を磨き続けていきます。
離陸する空自輸送機を見送る隊員たち