陸上自衛隊空挺教育隊(千葉県船橋市)
研究員 1等陸尉 久保山 延俊(くぼやま のぶとし)
19(令和元)年9月に発生した台風第15号により、千葉県では多くの被害が発生しました。特に電力に関連する損害は甚大で、県内の至る所において電柱の倒壊や断線に伴う停電が長期間にわたり発生しました。電力復旧に時間を要した要因は、倒木による断線などが広範囲にわたって発生したためであり、特にこの倒木が復旧作業の妨げとなっていました。
倒木を除去し早期の電力復旧に寄与するため、千葉県内の自衛隊をはじめ、全国各地の部隊をもって災害派遣活動が実施されましたが、その中で私は、東京電力成田支社に連絡員として派遣され、同支社と部隊間の連絡・調整業務に従事しました。
派遣当初は、異なる地図の使用や双方の作業組織の違いもあり、被害状況の認識共有や共同作業要領の確立に苦労しましたが、これらを解決するため、お互いが被害位置の情報を同時に共有できる共通のツールの使用や、お互いどんなことができるのか、できないことは何かを理解することに努めました。その結果、被害位置の特定から共同作業に至る時間の短縮が図られ、現場での効率的な自衛隊の運用に資することができました。
近年は、甚大な被害を伴う自然災害が年々増大しています。国民の皆様の自衛隊に対する強い期待に応えるべく、今回の派遣で得た教訓を胸に自衛官としての職務に邁進してまいります。
電力会社と停電復旧のための倒木
伐採要領について調整する筆者(右)
防衛省統合幕僚監部(東京都新宿区)
運用部運用第2課災害派遣班
3等海佐 羽田野 由佳(はたの ゆか)
統合幕僚監部は、自衛隊の運用にあたって防衛大臣を一元的に補佐する組織です。私が所属する災害派遣班は、統幕長を補佐し、災害などが発生した際、状況に応じた人員や装備品を適時に投入するための調整を行うなど、陸、海、空自の仲介役として、災害派遣活動をバックアップするという役割を担っています。
私は災害派遣班員として18(平成30)年3月に着任しましたが、当時の私は陸自や空自の任務や装備品に関する知識はほとんどありませんでした。しかしながら、北海道胆振東部地震や度重なる台風災害への対応といった災害派遣活動を通じ、陸自の大規模な施設能力や高度な医療技術、空自の全国を跨ぐ輸送能力や造水装置による高い給水能力などをはじめ、各自衛隊の組織や能力について幅広い知識を得ることができました。
陸、海、空自のそれぞれには「文化」という言葉で表現される考え方や儀礼上の作法があります。災害派遣班の陸・空自の同僚との意見の食い違いが生じた時は、「文化の違いだ。」と冗談まじりで言い合うこともありますが、一度災害が起きれば、あらゆる状況においても、陸海空の垣根を超えてそれぞれの文化で培った知恵を出し合い、特性を駆使することにより、任務達成のため幅広い支援活動を行います。私の活動場所は防衛省内にあり、現場ではありませんが、災害派遣活動を通じて、陸・海・空の部隊は一体となって活動しているという実感があります。
最近では、人命救助活動や生活支援といった通常の災害派遣とは異なった様相の災害派遣活動が求められることもあります。しかし、そのような場合であっても、陸、海、空自の色とりどりの制服の仲間と共に、「異文化コミュニケーション」をより円滑にし、いかにして腕の良い仲介役になれるかを目標に日々やりがいをもって勤務しています。
新型コロナウイルス対応のため、PFI船舶「はくおう」内において、ミーティング中の著者(上写真左端)
航空自衛隊中部航空施設隊第2作業隊
(石川県小松市)
第1小隊第2分隊員 空士長 福井 桂太(ふくい けいた)
私は、昨秋発生した令和元年東日本台風(台風第19号)にかかる災害派遣に参加しました。災害派遣への参加は、今回が初めてであり、それまではニュースなどで見た程度でしたが、いざ自分が派遣されると伝えられると、「被災者のためにできることは何でもやってやる!」と覚悟を決めました。
派遣されたのは、長野県長野市にある松代小学校でした。実際に現場に入ると、グラウンドは、氾濫した川から流れ込んだ流木やヘドロ、ごみで覆われており、一刻も早く元の状態に戻してやろうと強く思いました。
グラウンドの復旧は困難を極めました。数少ない重機や手作業でグラウンド内の流木やヘドロなどを除去しましたが、掘っても掘ってもグラウンドの土は現れず、「やっと土が見えてきた!」というタイミングで、また、大雨が降ることでヘドロが広がり、再度振り出しに戻るといった、傍目には地味ですが、厳しい状況でした。
それでも復旧作業の合間に、地元の小学生が歌を歌ってくれたり、手紙を送ってくれたりし、私はそれを励みに任務に邁進することができました。
災害派遣が命ぜられるような災害が再び発生することがないよう祈りつつも、今後、再び災害派遣を命じられた場合は、今回同様、強い使命感と誇りをもって、任務に邁進していきたいと考えています。
グラウンド内において
流木等の除去作業にあたる筆者