自衛隊は、防衛大臣命令に基づき、20(令和2)年1月31日から3月16日までの間、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための救援にかかる災害派遣を実施しました。
この間、災害派遣に従事した隊員は、政府施設における帰国邦人などや大黒ふ頭におけるクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗員・乗客に対する各種支援を実施するとともに、新型コロナウイルスという「見えない敵」と戦い、自衛隊員の二次感染者ゼロを達成することができました。
本災害派遣を自衛隊員の二次感染者ゼロで終結できたのは、防衛省・自衛隊として勤務区分に応じた防護基準などを常に見直すとともに、これを各級指揮官が徹底したことに加え、隊員一人一人の高い防護意識の成果です。ここでは、その防護基準、健康管理基準、環境整備などの要領について解説します。
まず、防護基準は、現地活動に際し、業務内容に応じて、着用すべき防護装備を定めたものです。最上限は感染防護服の着用であり、最下限はマスク、ガウン及び手袋のみの着用です。
次に、健康管理基準は、現地活動終了後、活動の感染リスクに応じて「個室で経過観察」するか「所属部隊へ復帰し健康観察」するものとし、全員PCR検査を実施することを定めたものです。(結果として「陽性」となった隊員はいませんでしたが、PCR検査が「陽性」の場合は、自衛隊中央病院へ入院となります。自衛隊中央病院では、外国人を含むクルーズ船の乗員・乗客や帰国者などにおける陽性患者の対応のほか、PCR検査などを実施しました。)
最後に、環境整備の要領は、消毒、ゾーニング(感染の危険のあるホットゾーンと安全なコールドゾーンに区画分け)及び廃棄物処理などの実施要領を定めたものです。
また、陸上総隊は、感染防止に関する知識を有する陸自の対特殊武器衛生隊などの隊員をもって派遣部隊を編成したことにより、その知見を活かした防護の徹底及び海上・航空自衛隊の派遣隊員に対する教育を実施できました。
さらに、横須賀地方隊や航空総隊も医務系統により感染防護を積極的に実施して、自衛隊員の二次感染者ゼロを達成しました。
これらは、各部隊の日頃のNBC訓練の成果に加え、十分な食事、休養、入浴による良好な健康状態の維持、最前線で災害派遣に従事する隊員のほか、指揮所勤務や後方支援(派遣隊員が宿泊した「はくおう」や民間船舶「シルバークィーン」の役務監督を実施した中央輸送隊を含む。)にあたった全ての隊員の努力が一つに繋がった成果です。
中央病院におけるゾーニング
感染防護教育
「はくおう」における食事