Contents

第IV部 防衛力を構成する中心的な要素など

➍ 民生技術の積極的な活用

1 国内外の関係機関との技術交流や関係府省との連携の強化

先進的な民生技術を取り込み、効率的な研究開発を行うため、防衛装備庁と大学や独立行政法人などの研究機関との間で、研究協力や技術情報の交換などを積極的に実施している。

また、先進技術の活用による優れた防衛装備品の創製や効果的、効率的な研究開発を行うため、国内においては、「統合イノベーション戦略2019」(令和元年6月21日閣議決定)に基づき、総合科学技術・イノベーション会議4(CSTI:Council for Science, Technology and Innovation)などの司令塔会議5において横断的かつ実質的な調整を図るとともに、同戦略を推進するために設置された統合イノベーション戦略推進会議6に積極的に参画し、関係府省や国立研究開発法人、産業界、大学などとの一層の連携を図っている。加えて、民生技術の動向を把握し、技術力の相補的・相乗的な向上を図るため、研究機関などとの人的交流のさらなる強化を図ることとしている。

さらに、国外においては、日米共同研究や技術者同士の交流を引き続き積極的に進めていくとともに、その他の国々についても、各国の技術戦略などを注視しつつ、様々な場を活用して意見交換などを継続し、多様な可能性を継続的に検討していくこととしている。

2 安全保障技術研究推進制度とその活用

平成27(2015)年度から、防衛分野での将来における研究開発に資することを期待し、先進的な民生技術についての基礎研究を公募・委託する「安全保障技術研究推進制度」(競争的資金制度)を開始し、令和元(2019)年度までに74件の研究課題を採択7した。平成29(2017)年度に、大規模かつ長期間にわたる研究課題についても採択できるよう、本制度を拡充しており、令和2(2020)年度も、引き続き同様の規模(総額:約95億円)で推進することとしている。

センサエキスポジャパン2019にて安全保障技術研究推進制度を活用した研究成果を展示(19(令和元)年9月)

センサエキスポジャパン2019にて安全保障技術研究推進制度を活用した
研究成果を展示(19(令和元)年9月)

なお、本制度が対象とする基礎研究においては、研究者の自由な発想こそが革新的、独創的な知見を獲得するうえで重要である。このため、研究の実施にあたっては、学会などでの幅広い議論に資するよう研究成果を全て公開できるなど、研究の自由を最大限尊重することが必要である。よって、本制度では、研究成果の公表を制限することはなく、防衛省が研究成果を秘密に指定することや研究者に秘密を提供することもない。研究成果については、既に学会発表や学術雑誌への掲載などを通じて公表されている。

本制度などを通じて、先進的な民生技術を積極的に活用することは、将来にわたって国民の命と平和な暮らしを守るために不可欠であるのみならず、米国防省高等研究計画局(DARPA:Defense Advanced Research Projects Agency)による革新的な技術への投資が、インターネットやGPSの誕生など民生技術を含む科学技術全体の進展に寄与してきたように、防衛分野以外でもわが国の科学技術イノベーションに寄与するものである。防衛省としては、引き続き、こうした観点から関連する施策を推進していくとともに、本制度が学問の自由と学術の健全な発展を確保していることの周知に努めることとしている。

参照図表IV-2-2-2(安全保障技術研究推進制度の令和元年度新規採択研究課題)

図表IV-2-2-2 安全保障技術研究推進制度の令和元年度新規採択研究課題

4 内閣総理大臣、科学技術政策担当大臣のリーダーシップのもと、各省より一段高い立場から総合的・基本的な科学技術・イノベーション政策の企画立案及び総合調整を行うことを目的とした「重要政策に関する会議」の一つ。

5 総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)のほか、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部、知的財産戦略本部、健康・医療戦略推進本部、宇宙開発戦略本部及び総合海洋政策本部並びに地理空間情報活用推進会議

6 内閣官房長官のリーダーシップのもと、全ての国務大臣が参加し、「統合イノベーション戦略2019(令和元年6月21日閣議決定)」に盛り込まれた項目のうち、特にイノベーション関連の司令塔間で調整の必要がある事項について、点検・整理などを行い、横断的かつ実質的な調整・推進を実施することを目的とした会議

7 「安全保障技術研究推進制度」(競争的資金制度)の採択研究課題については、防衛装備庁HPを参照