装備品の高度化・複雑化により、装備品のライフサイクル(構想、研究・開発、量産・配備、運用・維持など)全体のコストが増加傾向にある中、品質が確保された装備品を適切な経費で必要とする時期までに効率的かつ計画的に取得するには、ライフサイクル全体を通じた取得の効率化と、それを実現するための組織的な管理体制が極めて重要である。
このため、防衛装備庁の設置(15(平成27)年10月)以来、同庁プロジェクト管理部が重要な装備品を選定したうえでライフサイクルを通じたプロジェクト管理を実施し、最適な装備品の取得の実現に向けた取組を推進している。
具体的には、プロジェクト管理を実施する対象装備品(以下「対象装備品」という。)として、20(令和2)年3月末時点で、18品目のプロジェクト管理重点対象装備品と6品目の準重点管理対象装備品1を選定した。また、プロジェクト管理重点対象装備品については、専属の担当官としてプロジェクトマネージャー(PM:Project Manager)を置くとともに、省内関連部署の職員で構成される統合プロジェクトチーム(IPT:Integrated Project Team)によるプロジェクト管理体制をとった。
これまで(20(令和2)年3月末時点)に、選定した対象装備品のうち23品目について、取得プログラムの目的や取得方針、ライフサイクルコストなど、計画的にプロジェクト管理を進めるために必要な基本的な事項を定めた「取得戦略計画」及び「取得計画」(以下、「取得戦略計画など」という。)を策定し、最適な装備品の取得の実現を図るための戦略的な計画を示した。
さらには、原則、毎年度、各自衛隊などの事業の実施状況を確認したうえで、前年度からの計画の変更点をまとめた分析及び評価を作成し、これを基に適宜、取得戦略計画などを見直すなど、最新の状況を反映した適切なプロジェクト管理の推進に努めている。また、19(令和元)年8月の取得プログラムの分析及び評価は、取得戦略計画などを策定済みの19品目に対して実施した。
参照図表IV-2-3-1(プロジェクト管理重点対象装備品及び準重点管理対象装備品)
プロジェクト管理を推進、強化するために以下の取組を行っている。
ア WBSによるコスト・スケジュールの管理
一部の国内生産の装備品については、装備品の構成要素(WBS:Work Breakdown Structure2)ごとに作業の進捗状況、経費の発生状況などを可視化することができるマネジメント手法の導入を推進し、コスト上昇やスケジュール遅延を早期に察知し、迅速な対応が行えるようなコスト・スケジュールの管理に努めている。
イ コスト見積り精度向上に関する手法の検討
ライフサイクルコストなどのコスト見積りは、これまでに開発あるいは導入した類似装備品の実績コストデータから推定しているが、見積り精度を向上するためには、より多くのデータに基づき推定する必要があることから、コストデータベースを構築し、コストデータの収集とそのデータベース化を推進している。
ウ 研究教育機関などとの連携強化による専門知識の習得・発展
プロジェクトマネージャーなどのマネジメント能力のさらなる向上やプロジェクト管理に携わる人材の育成のため、プロジェクトマネジメントに関する研究教育機関などとの連携強化の推進や、海外や民間におけるプロジェクト管理手法の研修などを定期的に実施している。
装備品の効果的・効率的な取得を一層推進するためには、装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理の実効性及び柔軟性の向上が必要である。このため、中期防においては、装備品の開発段階から、量産以降の段階のコスト低減に資する取組を要求事項として盛り込むことや、民生分野における成功事例の装備品製造などへの取り込み、民間の知見の活用に資する企画競争方式などの契約方式の積極的な適用、コスト管理の厳格化など、新たな取組に着手することとしている。その際、プロジェクト管理の対象品目を拡大するとともに、ライフサイクルコストとの関係を含め、事業計画の見直しに関する基準の適正化を図ることとしている。また、より効率的な装備品取得のため、装備品の選定段階での精緻なライフサイクルコスト算出や、代替案検討、企業提案内容に対する拘束性確保などを行うこととしている。