第III部 わが国の防衛に関する施策
3 自衛隊の統合運用体制

06(同18)年、防衛庁(当時)・自衛隊は統合運用体制に移行した。これにより、平素から陸・海・空自を一体的に運用できる態勢が整い、拡大、多様化する自衛隊の任務を迅速かつ効果的に遂行することが可能となった。
その後も、防衛力の効率的な運用の必要性や陸・海・空自が一体となって活動するニーズは増大しており、現下の安全保障環境に照らしても、統合運用体制は引き続き強化すべきものであることから、統幕の機能強化をはじめ、統合運用基盤の強化に取り組んでいる。

1 統合運用体制の概要

(1)統幕長の役割

ア 統幕長は、統一的な運用構想を立案し、自衛隊の運用に関する軍事専門的観点からの大臣の補佐を一元的に行う。

イ 自衛隊の運用に関する大臣の指揮は統幕長を通じて行い、自衛隊の運用に関する命令は、統幕長が執行する。その際、統合任務部隊1が組織された場合はもとより、単一の自衛隊の部隊を運用して対処する場合であっても、大臣の指揮命令は、統幕長を通じて行われる。

(2)統幕長と他の幕僚長との関係
統幕は、陸・海・空幕から移管・集約した自衛隊の運用に関する機能を担い、陸・海・空幕は、人事、防衛力整備、教育訓練などの部隊を整備する機能を担う。
加えて、統幕長は、自衛隊の統合運用による円滑な任務遂行を図る観点から、中長期的な防衛構想や年度業務計画の方針的事項を作成して、陸・海・空自に対して必要な機能を明らかにし、陸・海・空幕長はこれを参考に、各種措置を講ずる。
なお、自衛隊の運用に必要な情報については、「防衛省の中央情報機関」たる情報本部が統幕および部隊などに提供する。
(図表III-1-2-5参照)

図表III-1-2-5 自衛隊の運用体制および統合幕僚長と陸上・海上・航空幕僚長の役割
2 統合運用体制の充実のための基盤整備

統合運用体制においては、陸・海・空自の各部隊間における確実な指揮命令の伝達と迅速な情報共有が重要である。これらを支える基盤として、これまで防衛省・自衛隊の共通ネットワークである防衛情報通信基盤(DII:Defense Information Infrastructure)や、各自衛隊の主要な指揮システムなどと接続して情報を集約し防衛大臣などの指揮監督を支援する中央指揮システム(CCS:Central Command System)を整備してきた2。統合運用基盤を強化するため、衛星通信を含む高度な情報通信ネットワークを活用した指揮統制機能および情報共有態勢を保持することとされており3、引き続き内外の優れた情報通信技術を利用したより広範・機動的な情報通信態勢の構築を進めている。
また、情報システム・通信ネットワークはサイバー攻撃のような脅威から防護されている必要があることから、統合的なサイバー攻撃対処能力の強化に取り組んでいる。
参照 1節3
各部隊においても、統合任務部隊の指揮官となることが予想される主要部隊指揮官4は、平素から計画の作成などを行うとともに、統合訓練などを通じて、任務を遂行できる態勢を維持しておく必要がある。そのため主要部隊司令部には、他自衛隊の幕僚を平素から配置するとともに、必要に応じて幕僚を増員することとしている。なお、平成24年度は、日米共同統合演習(実動演習)などを通じて統合運用能力の維持・向上、各種計画の検証などを行っている。
これまでの実績を踏まえつつ、教育訓練の充実、自衛隊の司令部組織のあり方、統合運用に適した人材の育成、装備品の共通化などについて、より効果的な運用体制を目指して引き続き検討し、必要な措置を講じていく。


1)自衛隊法第22条第1項または第2項に基づき、特定の任務を達成するために特別の部隊を編成し、または隷属する指揮官以外の指揮官の一部指揮下に所要の部隊を置く場合であって、これらの部隊が陸・海・空自の部隊のいずれか2以上からなるものをいう。
2)各システムの詳細については、「防衛庁・自衛隊における情報通信技術革命への対応に係る総合的施策の推進要綱」参照
3)衛星通信は、広域性・即時性などの特徴を活かし、周辺海域において警戒監視活動を行う護衛艦や航空機との通信、被災地や海外に展開する部隊との通信などに利用されている。
4)陸自各方面総監および中央即応集団司令官、海自自衛艦隊司令官および各地方総監、空自航空総隊司令官、航空支援集団司令官および各航空方面隊司令官など
 
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