第III部 わが国の防衛に関する施策
3 サイバー攻撃への対応

近年、情報通信基盤へのサイバー攻撃は高度化・複雑化しており、サイバー空間の安定的利用に対するリスクが新たな課題となっている。こうした状況を踏まえ、防衛省では、12(同24)年9月、取り組むべき施策を一体的かつ整合的に推進していくための指針として、「防衛省・自衛隊によるサイバー空間の安定的・効果的利用に向けて」をとりまとめ、必要な取組を行っている。

1 基本的考え方

防衛省・自衛隊が任務を遂行していくためには、サイバー空間のもたらすリスクに対応しつつ、その便益を最大限に活用していくことが必要である。このため、防衛省・自衛隊の「インフラ」としてサイバー空間の安定的利用を確保するとともに、サイバー空間という陸・海・空・宇宙に並ぶ新たな「領域」において活動するための能力などを充実・強化していかなければならない。その際、
<1> 防衛省・自衛隊の能力・態勢強化
<2> 民間も含めた国全体の取組への寄与
<3> 同盟国を含む国際社会との協力
を基本方針として取組を進めていくこととしている。

2 防衛省・自衛隊の取組

自衛隊は、サイバー攻撃に対し、自らの情報システムを防護するために必要な機能を統合的に運用して対処するとともに、サイバー攻撃に対する高度な知識・技能を蓄積し、政府全体として行う対応にも寄与している。
サイバー攻撃への対処にあたっては、自衛隊の防衛情報通信基盤や中央指揮システム1について、「自衛隊指揮通信システム隊」が24時間態勢で自衛隊の通信ネットワークを監視している。また、情報通信システムの安全性向上を図るための侵入防止システムなどの導入、サイバー防護分析装置などの防護システムの整備にとどまらず、人的・技術的基盤の整備も含めた総合的な施策が必要であることから、サイバー攻撃対処に関する態勢や要領を定めた規則2の整備や最新技術の研究などを行っている。
平成25年度には、日々高度化・複雑化するサイバー攻撃の脅威に適切に対応するため、「サイバー防衛隊(仮称)」を新設するなど体制の充実・強化を図るほか、ネットワーク監視態勢の強化事業やサイバー演習環境構築技術に関する研究を始めるなど、運用基盤の充実・強化にも取り組むこととしている。また、防衛大学校におけるネットワークセキュリティ分野の教育・研究体制の整備、国内外の大学院への職員留学など、高度な知見を有する人材の育成のための取組などを継続して行っている。(図表III-1-1-7参照)

図表III-1-1-7 サイバー防衛隊(仮称)のイメージ図

一方、サイバー空間の安定的利用を防衛省・自衛隊のみによって達成することは困難であることから、内閣官房情報セキュリティセンター(NISC:National Information Security Center)など関係省庁との連携に加え、日米の首脳間合意に基づき立ち上げられた「日米サイバー対話」や「日米ITフォーラム」への参加などを通じてサイバー空間をめぐる課題や情報セキュリティに関する情報交換を行うほか、サイバー攻撃を想定した日米共同訓練を行うなど、米国をはじめとする国際社会との連携・協力も進めている。
このように、日々高度化・複雑化するサイバー攻撃の脅威を踏まえ、防衛省におけるサイバー政策について検討および実施する体制を一層強化するため、13(同25)年2月、防衛副大臣を委員長とするサイバー政策検討委員会を設置し、諸外国や関係機関との協力、サイバー攻撃などへの対処を担う人材の育成・確保、防衛産業との協力、サプライチェーンリスク3への対応などについて検討を行っている。

サイバー防衛隊(仮称)準備室の発足時の様子
サイバー防衛隊(仮称)準備室の発足時の様子

1)2節3脚注2を参照
2)防衛省の情報保証に関する訓令(平成19年防衛省訓令第160号)などがある。
3)装備品の設計・製造・調達・設置段階において、装備品の構成部品などにコンピューター・ウィルスを含む悪意のある「ソフトウェア」を埋め込まれるなどのリスクをいう。
 
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