第II部 わが国の防衛政策と日米安保体制
第3節 平成25年度の防衛力整備
1 平成25年度の防衛予算の準拠となるべき方針

本章第2節で述べたように、13(同25)年1月、22大綱の見直しおよび23中期防の廃止とあわせて、平成25年度の防衛予算の編成にあたり準拠となる方針が閣議決定された。

1 考慮すべき環境

この方針では、平成25年度の防衛予算の編成にあたり考慮すべき環境として、
○ 北朝鮮が引き続き核・弾道ミサイルの開発を推進し、地域の重大な不安定要因であり続けているほか、周辺国による軍事力の近代化および軍事的活動の活発化が継続していること
○ 最近の中国による領海侵入および領空侵犯を含むわが国周辺海空域における活動の活発化については十分に考慮する必要があること
○ 東日本大震災という未曾有の大災害の経験により、大規模災害に対する備えの重要性が改めて認識されていること
○ 「平成25年度予算編成の基本方針」(平成25年1月24日閣議決定)において、「平成25年度予算は、緊急経済対策に基づく大型補正予算と一体的なものとして、いわゆる「15ヶ月予算」として編成する」、また、「財政状況の悪化を防ぐため、民主党政権時代の歳出の無駄を最大限縮減しつつ、中身を大胆に重点化する」こととされていること
などを示している。

2 基本的考え方

この方針は、前述のわが国周辺の安全保障環境を踏まえ、わが国の領土・領海・領空および国民の生命・財産を守る態勢の強化に取り組むこととしている。その際、特に以下の事項を重視することとしている。

(1)各種事態への実効的な対応および即応性の向上
南西地域をはじめとするわが国周辺における情報収集・警戒監視および安全確保に関する能力、島嶼防衛のための輸送力・機動力・防空能力、サイバー攻撃や弾道ミサイル攻撃への対応能力の向上に重点的に取り組む。
また、こうした任務などの遂行に不可欠な情報機能や指揮通信機能を強化するとともに、装備品の可動率の向上などの即応性強化のための施策を推進する。
さらに、大規模自然災害や特殊な災害に際して国民の生命・財産を守るため、東日本大震災の教訓を踏まえた自衛隊の災害対応能力を強化する。
なお、自衛官の定数については、22大綱の見直しなどの結論を得るまで変更しない。

(2)日米同盟の強化
わが国周辺の安全保障環境が一層厳しさを増していることから、「日米防衛協力のための指針」の見直しの検討を含め、日米防衛協力の実効性をさらに強化するための施策を推進する。
また、米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄県をはじめとする地元の負担軽減を図るため、普天間飛行場の移設を含む在日米軍の兵力態勢の見直しなどについての具体的な措置を着実に実施する。

(3)国際的な安全保障環境の一層の安定化への取組
アジア太平洋地域をはじめとする国際的な安全保障環境の一層の安定化を図るため、人道支援・災害救援その他の分野における各種協力、二国間および多国間の対話などをさらに推進する。
また、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散防止、テロ・海賊への対処、国連平和維持活動などの活動に主体的かつ積極的に対応するため、自衛隊による国際活動基盤の強化などに取り組む。

(4)効果的・効率的な防衛力整備
厳しい財政事情を踏まえ、現下の安全保障環境における喫緊の課題への対応に重点的に取り組むとともに、精強性向上の観点から自衛官の階級・年齢構成の適正化など人的資源の効果的な活用を図るほか、装備品などの効率的な取得のための取組を推進する。
特に、ライフサイクルコストの抑制を徹底して費用対効果を高めるとともに、昨年の調達にかかる不適切な事実を踏まえ、調達プロセスの透明化および契約制度の適正化を推進する。
参照 資料10

 
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