第III部 わが国の防衛に関する諸施策
第4章 国民と防衛省・自衛隊

「防衛力」は、国の安全を守る最後の「砦」であり、他に代わる手段は存在しない。
わが国において防衛力を担う防衛省・自衛隊は様々な組織で構成されているが、その組織が機能を十分に発揮するためには、優れた能力を持つ隊員と最先端の装備品やシステムを保持し、これらが一体となって機能することはもちろんのこと、これらの装備品やシステムを生み出す技術力、生産力などが盤石であり、かつ防衛省・自衛隊の取組に対する国民や地域社会の理解と協力を得ることが必要不可欠である。
このような観点から、本章では、第1節において防衛省・自衛隊の組織編成と隊員の採用、教育訓練、人事施策など「人的基盤」について説明し、第2節において防衛生産・技術基盤や各種装備品の取得など「物的基盤」について説明する。最後に第3節において国民の理解と協力を得るために、地域社会や国民との間で行っている防衛省・自衛隊の様々な活動など「社会的基盤」について説明する。

第1節 防衛力を支える組織と人的基盤

わが国の防衛という国家存立にとって最も基本的な役割を担う組織である防衛省・自衛隊にとり、その防衛力を遺憾なく発揮させるためには、これを支える組織と「人的基盤」を充実させることが、きわめて重要である。
本節では、防衛省・自衛隊の組織について説明した上で、隊員の募集・採用、日々の教育や訓練の状況など、「人的基盤」の充実のための取組について説明する。

1 防衛力を支える組織
1 防衛省・自衛隊の組織

防衛省・自衛隊1は、わが国の防衛という任務を果たすため、実力組織である陸上・海上・航空自衛隊(陸・海・空自)を中心に、防衛大学校、防衛医科大学校、防衛研究所、情報本部、技術研究本部、装備施設本部、防衛監察本部など、さまざまな組織で構成されている。
(図表III―4―1―1・2参照)

図表III―4―1―1 防衛省の組織図
図表III―4―1―2 防衛省の組織の概要


2 防衛大臣を補佐する体制

防衛大臣は、防衛省の長として国の防衛に関する事務を分担管理し、自衛隊法の定めるところに従い、自衛隊の隊務を統括する。その際、防衛副大臣と2人の防衛大臣政務官が防衛大臣を補佐する。また、防衛大臣への進言を行う防衛大臣補佐官や、防衛省の所掌事務に関する基本的な方針について審議する防衛会議が置かれている。さらに、防衛大臣を助け、省務を整理し、各部局および機関の事務を監督する防衛事務次官が置かれている。
なお、平成24年度には、防衛大臣をはじめとする政務三役の補佐体制に万全を期すため、防衛省に対外関係業務などを総括整理する「防衛審議官」2を新設することとしている。
そのほか、防衛大臣を補佐する機関として、内部部局、統幕および陸・海・空幕が置かれている。内部部局は、自衛隊の業務の基本的事項を担当し、官房長および各局長はその所掌に応じて、防衛大臣が統幕長や陸・海・空幕長に対し行う指示・承認などについて補佐する。統幕は、自衛隊の運用に関する防衛大臣の幕僚機関であり、統幕長は、自衛隊の運用に関して軍事専門的観点から防衛大臣の補佐を一元的に行う。また、陸・海・空幕は運用以外の各自衛隊の隊務に関する防衛大臣の幕僚機関であり、陸・海・空幕長は、こうした隊務に関する最高の専門的助言者として防衛大臣を補佐する。
参照 II部1章3節

森本防衛大臣着任行事(12(平成24)年6月
森本防衛大臣着任行事(12(平成24)年6月
BMD統合任務部隊指揮官より弾道ミサイル等破壊措置命令の 態勢完了報告を受ける田中防衛大臣(当時)(12(平成24)年4月)
BMD統合任務部隊指揮官より弾道ミサイル等破壊措置命令の
態勢完了報告を受ける田中防衛大臣(当時)(12(平成24)年4月)
3 地方における防衛行政の拠点

防衛省と地方との関係は、防災への対応や国民保護に関する取組、防衛施設の安定的な使用といった観点から重要である。このため防衛省は、07(平成19)年9月、地方における防衛行政全般についての拠点を担う地方防衛局を地方支分部局として設置している。
地方防衛局は、防衛省全体の事務を円滑かつ効果的に行うため、防衛省の施策や米軍再編に関連した地方説明、さらには防衛施設の整備にともなう各種の地元調整といった様々な業務(地方協力確保事務)を行って地方公共団体や地域住民の理解と協力を得ている。

沖縄県宮古島に展開した空自高射部隊を視察する 渡辺防衛副大臣
沖縄県宮古島に展開した空自高射部隊を視察する
渡辺防衛副大臣

1)防衛省と自衛隊は、ともに同一の防衛行政組織である。「防衛省」という場合には、陸・海・空自の管理・運営などを任務とする行政組織の面をとらえているのに対し、「自衛隊」という場合には、わが国の防衛などを任務とする、部隊行動を行う実力組織の面をとらえている。
2)防衛審議官は、近年の安全保障環境の変化にともない、政策官庁としての防衛省・自衛隊の業務、特に米国その他諸外国との対外関係業務の増大が著しい現状を踏まえ、防衛省内の各部局を横断する事務を高いレベルから総括整理し、米国その他諸外国の事務方のトップレベルの者と、省全体にまたがる重要政策について着実に交渉などを行っていく職として新設するものである。
 
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