第III部 わが国の防衛に関する諸施策
3 大量破壊兵器の不拡散などのための国際的な取組
1 拡散に対する安全保障構想

(1)成立の背景など
北朝鮮、イランなどの拡散懸念国が大量破壊兵器・ミサイル開発を行っているとして強く懸念した米国は、02(平成14)年12月に「大量破壊兵器と闘う国家戦略」を発表し、"不拡散"、"拡散対抗"、"大量破壊兵器使用の結果への対処"という三本柱からなる包括的なアプローチを提唱した。
この一環として、03(同15)年5月、米国は、「拡散に対する安全保障構想(PSI:Proliferation Security Initiative)1」を発表し、各国に同取組への参加を求めた結果、12(同24)年6月現在、わが国を含め約100か国が支持する国際的な取組に発展している。
こうした取組の中で、大量破壊兵器などの拡散阻止能力の向上のため、12(同24)年6月末までに37回のPSI阻止訓練をはじめ、政策上、法制上の課題の検討のための会合を開催するなどの取組が行われている。

(2)これまでの防衛省・自衛隊としての取組など
防衛省・自衛隊は、関係機関・関係国と連携し、自衛隊が有する能力を活用して、PSIに関与していくことが必要であると考えている。このため、第3回のパリ総会(03(同15)年9月)以降、各種会合に自衛官を含む防衛省職員を派遣するとともに、海外で行われるPSI阻止訓練にオブザーバーを派遣して、関連する情報の収集に努め、04(同16)年以降は、訓練への参加を継続的に行ってきた。
現在まで、PSI海上阻止訓練を外務省、警察庁、財務省、海上保安庁など各関係機関と連携しつつ、わが国主催で2回行った。また、12(同24)年7月にはPSI航空阻止訓練を初めてわが国主催で行う。防衛省としては、わが国周辺における拡散事例などを踏まえれば、PSIを、広く防衛、外交、法執行、輸出管理などを包含した安全保障上の課題としてとらえて、平素から大量破壊兵器などの拡散防止に取り組んでいく必要があると考えている。このため、今後も引き続き、自衛隊の対処能力の向上などの観点から、各種訓練や会合への参加や主催のほか、PSIを含む不拡散体制の強化のための活動に努めていく。
(図表III―3―6―2参照)

図表III―3―6―2 PSI阻止訓練への防衛省・自衛隊の参加実績(平成21年度以降)
立ち入り検査訓練の準備を行う海自隊員
立ち入り検査訓練の準備を行う海自隊員
2 大量破壊兵器の不拡散に関する国連安保理決議1540号

04(同16)年4月、国連安保理は、核・生物・化学(NBC:Nuclear,Biological and Chemical)兵器とそれらの運搬手段の拡散が国際社会の平和と安全に対する脅威であり、これに対する適切かつ有効な行動を取るとして、国連憲章第7章のもと、
<1>大量破壊兵器およびその運搬手段の開発などを企てる非国家主体に対し、いかなる形態の支援も控えるべきこと
<2> 特にテロリストによる大量破壊兵器およびその運搬手段の製造などを禁止する適切で効果的な法律を採択し、執行すべきこと
<3> 大量破壊兵器およびその運搬手段の拡散を防止するため、国境管理や輸出管理措置を確立すること
などを内容とした「大量破壊兵器の不拡散に関する国連安保理決議第1540号」を全会一致で採択した。
わが国としては、大量破壊兵器などの拡散が、わが国を含む国際社会の平和と安定に及ぼす危険性を踏まえ、これら大量破壊兵器などがテロリストなどの非国家主体に拡散することを防ぐことが国際社会の喫緊の課題であるとの認識に基づき、この決議の採択を支持するとともに、すべての国連加盟国がこの決議を遵守することを期待している。


1)拡散に対する安全保障構想は、大量破壊兵器およびその関連物資などの拡散を防止するため、既存の国際法、国内法に従いつつ、参加国が共同してとりうる措置を検討し、また、同時に各国が可能な範囲で関連する国内法の強化にも努めようとする構想。
 
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