第III部 わが国の防衛に関する諸施策
2 防衛省改革

1 改革の背景・経緯

防衛省改革は、国民の信頼を確保し、与えられた任務を適切に遂行することができる組織としていくことが本旨であり、これまで不祥事案の再発防止や、中央組織の改編を含む防衛省改革に取り組んできた。
近年、防衛省・自衛隊に対する国民からの信頼を揺るがす、様々な事案を生起させたことに対して、07(平成19)年に「防衛省改革会議」が官邸において数次にわたり開催され、08(同20)年に報告書がとりまとめられた。防衛省は、この報告書において示された基本的方向に従い、規則遵守の徹底や全体最適をめざした任務遂行優先型の業務運営の確立などに取り組むとともに、09(同21)年には防衛大臣を補佐する体制を強化し、文民統制の徹底を図るため、防衛会議の法律上の新設や、防衛大臣補佐官の新設などを行った。
参照 資料64

2 新政権における防衛省改革の方針

09(同21)年9月の政権交代を踏まえ、防衛省改革については、国民から負託を受けた現政権の視点で見直す必要があるとの判断から、改めて議論し直すこととし、防衛大臣を含む政務三役主導のもと、新政権としての新たな防衛省改革を実現すべく、旧政権下の改革案を精査し、有識者との懇談会など検討を重ねた上で、10(同22)年6月、新政権として取り組むべき防衛省改革の方針を示す「防衛省改革に関する防衛大臣指示」(「検討の柱」)を策定した。
「検討の柱」の概要は、以下のとおりである。
新政権として防衛省改革を推進するにあたっては、不祥事案の再発防止の観点は当然のこととし、それにとどまらず、シビリアン・コントロールの実効性を確保しつつ、防衛省を取り巻く環境に対応して防衛行政を効果的・効率的に推進するとの観点から改革を進めていく。
<1> 中央組織改革
シビリアン・コントロールは防衛政策の根幹であり、これを確保するためには、その主体であり政治家たる防衛大臣に対する、文官および自衛官各々の専門性を十分に生かした補佐体制が必須。このため、内部部局が省としての意見集約を図る一方で、防衛大臣が文官および自衛官各々の専門性を生かした組織的意見を聴くことができる仕組は妥当なものであると考える。このような観点から、運用部門や防衛力整備部門における内部部局および幕僚監部への一元化や文官と自衛官の混合化について再検討する。
一方、内部部局および幕僚監部という二元的組織構造に由来する不具合の是正のための検討を行う。運用部門においては、内部部局と統合幕僚監部の業務の重複を避け、文官と自衛官の協働を確保しつつ意思決定の迅速化を図るため、事態ごとのシミュレーションを行いながら、業務のあり方について検討する。また、防衛力整備部門においては、予算配分の硬直化を避け防衛力整備の効率化を図ることも視野に入れつつ、真に実効的な防衛力を構築するための業務のあり方について検討する。
<2> 取得改革
契約における公正性・透明性の確保に十分留意するとともに、それにとどまらず装備品の維持・整備分野における改革や防衛産業・技術基盤の確保なども含め、総合的に検討する。
<3> 人材の確保・育成
優秀な隊員を確保するとともに、倫理マインドと幅広い視野を持ちつつ高い規律を保持した隊員を育成するための施策を検討する。
<4> これまで実施してきた不祥事案の再発防止策の取扱い防衛省改革会議の報告書に基づき実施してきた不祥事案の再発防止策については、引き続き実施することとするが、最近の防衛省・自衛隊における不祥事案も踏まえ、さらなる対策が必要か否かについて検討する。
参照 資料65

3 現在の検討状況

「検討の柱」に沿って防衛省改革を推進するため、10(同22)年8月、政務三役および防衛大臣補佐官のほか、内部部局や各幕僚監部をも含めた全省的な推進体制として「防衛省改革推進会議」を設置し、第1回会議を開催した。この会議において、「検討の柱」に基づき行っていく具体的な施策をとりまとめた。
(図表III―4―1―3参照)

図表III―4―1―3 「検討の柱」に基づく具体的検討項目

防衛省では、中央組織改革については事態対処シミュレーションの実施など、取得改革については「防衛生産・技術基盤研究会」の開催など、人材の確保・育成については看護師養成課程の4年制化に向けた準備などを行うとともに、空自第1補給処におけるオフィス家具等の調達にかかる談合事案の調査結果を踏まえた改善措置や秘密保全の徹底といった不祥事再発防止策を講じるなど、防衛省改革推進会議においてとりまとめられた具体的な施策に取り組んでいるところである。
さらに、「防衛力の実効性向上のための構造改革推進委員会」などが防衛省改革推進会議と密接に連携して、各々の検討を進めている。

 
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