第III部 わが国の防衛に関する諸施策
第2節 各国との防衛協力・交流の推進

わが国にとって、アジア太平洋地域およびグローバルな安全保障環境を改善し、わが国の安全と繁栄を確保するためには、日米同盟を基軸としつつ、多国間および二国間の対話・交流・協力の枠組を多層的に組み合わせてネットワーク化して行くことが重要である。このため、防衛省・自衛隊は、各国・地域の特性を踏まえ、戦略的に防衛協力・交流を行っている。
(図表III―3―2―1参照)

図表III―3―2―1 各国との防衛協力・交流の実績(過去3か年)

参照 資料53
参照 1節

1 日豪防衛協力・交流
1 オーストラリアとの防衛協力・交流の意義など

オーストラリアは、わが国にとってアジア太平洋地域の重要なパートナーであり、同じ米国の同盟国として、民主主義、法の支配、人権の尊重、資本主義経済といった基本的な価値のみならず、安全保障分野において戦略的利益や関心を共有している。特に、近年、グローバルな課題については、各国が一致して取り組むべきとの認識が国際社会に浸透しており、日豪両国は、アジア太平洋地域において責任ある国として、災害救援や人道支援活動などの非伝統的安全保障分野を中心とした相互協力を強化している。
日豪二国間の防衛協力・交流は、07(平成19)年3月、日豪両首脳の間で、米国以外では初めての安全保障分野の共同宣言である「安全保障協力に関する日豪共同宣言」1を発表して以来、着実に進展しており、現在ではより実際的・具体的な協力の段階に移行している。
10(同22)年5月、第3回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)において、物品役務相互提供協定(ACSA:Acquisition and Cross-Servicing Agreement)2およびACSAに基づく手続取決めの署名が行われた。署名式と同日に行われた日豪「2+2」および日豪防衛相会談においては、国連平和維持活動(PKO)や災害救援活動などの現場で活動する豪軍との間で協力が期待されるとともに、今後の両国間の協力分野の拡大の検討が言及された。
日豪ACSAによりPKOや国際緊急援助活動などを自衛隊と豪軍が行う際、現場において水・食料・燃料・輸送などの物品や役務を相互に融通できるようになり、日豪の戦略的パートナーシップは一層円滑かつ強固なものとなる。また、このような日豪の協力の円滑化・強化は、アジア太平洋地域の平和と繁栄に貢献するとともに、協力を通じた域内秩序の形成にも資することが期待される。なお、米国以外の国との初めてのACSA締結は、今後わが国が行う防衛協力・交流にとって大きな意味を持つものと考えられる。日豪ACSAの国会承認は得られたものの、その実施のためには国内法を早急に整備する必要がある。また、12(同24)年5月には、情報共有の促進を目的として、日豪情報保護協定に署名した。

2 最近の主要な防衛協力・交流実績など

12(同24)年6月、第11回IISSアジア安全保障会議(シャングリラ会合)に連接して行われた、渡辺防衛副大臣とスミス豪国防大臣との会談では、アジア太平洋地域における緊密な友人として、国際平和協力活動や装備・技術分野における協力を含む、様々な分野での協力の促進について認識を共有した。
近年では、米国を含めた日米豪3か国の協力も増えている。日豪は、ともに米国の同盟国であると同時に、基本的な価値を共有しており、アジア太平洋地域および国際社会が直面する様々な課題の解決のため、緊密に協力している。このような協力を効果的、効率的なものとするためには、地域の平和と安定のために不可欠な存在である米国を含めた日米豪3か国による協力を積極的に推進することも重要である。
12(同24)年6月のシャングリラ会合では、第2回目となる日米豪防衛相会談(渡辺防衛副大臣が出席)が行われ、初めて「日米豪防衛首脳共同声明」が発出され、3か国間の確立された協力関係に基づき、アジア太平洋地域における多様な安全保障の課題に対応していくことで認識が一致した。
事務レベルにおいても、07(同19)年4月以降、計4回にわたって、3か国の局長級会合である日米豪安全保障・防衛協力会合(SDCF:Security and Defense Cooperation Forum)が行われ、3か国間の防衛協力の協調的推進などについて協議を行ったほか、12(同24)年6月には、海自、米海軍および豪海軍との間で、5度目となる日米豪3か国による訓練を行った。また、12(同24)年2月には、空自、米空軍および豪空軍との間でグアムにおいて日米豪共同訓練「コープ・ノース・グアム」を初めて行った。11(同23)年7月には陸幕長と豪陸軍本部長が日米豪3か国の関係を強化するとの観点から日米共同訓練および米豪共同訓練に相互にオブザーバーを派遣して今後の共同訓練を推進していくことを合意するとともに、12(同24)年2月、陸自と米陸軍との間で行われた日米共同方面隊指揮所演習に豪陸軍のオブザーバーを初めて受け入れた。
これらの協議や協力を通じて情勢認識を3か国で共有し、政策協調を図るとともに、ACSAが発効した後は、災害救援活動や共同訓練などの運用面における3か国の協力をさらに積極的に進めていくなど、3か国の協力関係を一層発展・深化していくことが重要である。
(図表III―3―2―2参照)

図表III―3―2―1 各国との防衛協力・交流の実績(過去3か年)
日米共同訓練における豪陸軍オブザ−バー招待状署名式に 参加した君塚陸幕長(東京12(平成24)年2月)
日米共同訓練における豪陸軍オブザ−バー招待状署名式に参加した君塚陸幕長
(東京12(平成24)年2月)

1)<http://www.mod.go.jp/j/press/youjin/2007/06/06d.html>参照
2)正式名称:日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定
 
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