第III部 わが国の防衛に関する諸施策
第3章 国際社会における 多層的な安全保障協力

今日の国際社会における安全保障課題は、一国のみで対応することがきわめて困難であり、わが国としても、地域あるいはグローバルな安全保障課題に対し、同盟国、友好国その他の関係各国と協力して取り組むことが重要である。
こうした状況を踏まえ、22大綱においては、アジア太平洋地域における協力およびグローバルな国際社会の一員としての協力による「国際社会における多層的な安全保障協力」を、わが国の安全保障の基本方針の柱の一つとして位置づけている。
これを受け、わが国は、<1>二国間・多国間の安全保障協力を多層的に組み合わせてネットワーク化し、日米同盟ともあいまって、アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化に効果的に取り組むとともに、<2>グローバルな安全保障環境を改善し、わが国の安全と繁栄の確保に資するよう、国際社会の一員として、国際平和協力活動などに積極的に取り組むこととしている。
本章では、主に<1>の「アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化」に関連する施策を第1節および第2節で説明し、主に<2>の「グローバルな安全保障環境の改善」に関連する施策を第3節、第4節、第5節および第6節で説明する

第1節 アジア太平洋地域における多国間安全保障協力・対話の推進
1 安全保障協力・対話、防衛協力・交流の意義と変遷

冷戦終結後、軍事力や国防政策の透明性を高めるとともに、防衛当局者間の対話・交流、部隊間の各種訓練などを通じて相互の信頼関係を深めることで、無用な軍備増強や不測の事態の発生とその拡大を抑えることが重要との認識が広まった。また、国家間の相互協力・依存関係が一層進展し、様々な安全保障上の課題に国際社会が協力して取り組むべきとの認識も浸透した。
わが国としても、安全保障環境の改善に積極的に取り組む中、近年の防衛交流は質的に深化し、量的に拡大している。具体的には、<1>信頼醸成に加え、協力関係の構築・強化の動きが加速し、<2>対話や交流の相手国が近隣諸国を越えてグローバルな広がりをみせている。また、<3>親善目的のみならず実務的な性格を有する交流や、対話のみならず行動をともなう交流の重要性が高まり、相手国によっては、防衛交流の内容が、単なる交流から具体的な協力を行う段階へと発展・深化してきている。さらに、<4>多国間の安全保障の枠組についても、アジア太平洋地域における安全保障面での取組は、信頼醸成を主眼とした対話の段階から、域内秩序の形成や共通規範の構築といった具体的な協力の段階に移行しつつある。
このような情勢を踏まえ、防衛省としても、限られた資源を効果的・効率的に活用しつつ、今後の国際社会における多層的な安全保障協力に積極的に取り組んでいる。その際、各国・地域の特性を踏まえ、安全保障協力・対話、防衛協力・交流を戦略的に行っていくことが必要である。
具体的には、特に、災害救援やテロ対策などの非伝統的安全保障分野において、全体的な協力感・協調感を醸成していくことが重要であり、こうした取組を基礎として、域内秩序の形成や共通規範の構築に向けた実際的・具体的な協力を進めることが必要である。また、わが国周辺の国や地域においては、対立感や警戒感をなくし、未来志向の視点で協調的・協力的な雰囲気を醸成し、二国間・多国間の場で積極的な協力を進めることが必要である。
22大綱においても、「アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化」が防衛力の役割の一つとして位置づけられたところであり、防衛省・自衛隊としても、安全保障協力・対話、防衛協力・交流、共同訓練・演習を多層的に推進している。
(図表III―3―1―1・2・3参照)

図表III―3―1―1 安全保障対話・防衛交流
図表III―3―1―2 対話、交流から協力へ
図表III―3―1―3 防衛協力・交流イメージ

 
前の項目に戻る     次の項目に進む