第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

2 自衛隊の訓練

(1)各自衛隊の訓練
 各自衛隊の部隊などで行う訓練は、隊員それぞれの職務の練度向上を目的とした隊員個々の訓練と、部隊の組織的な行動を練成することを目的とした部隊の訓練とに大別される
 隊員個々の訓練は、職種などの専門性や隊員の能力に応じて個別的、段階的に行われる。部隊の訓練は、小部隊から大部隊へと訓練を積み重ねながら、部隊間での連携などの大規模な総合訓練も行っている。

参照 資料77

 また、このようなわが国の防衛のための訓練に加え、国際平和協力活動や大規模災害への対応など、近年の自衛隊の任務の多様化に対応した訓練の充実にも努めている。

参照 1章2節53章1節1

(2)統合訓練
 わが国への武力攻撃などが発生した場合に、自衛隊が、その能力を最も効果的に発揮するためには、平素から陸・海・空自の統合訓練を行うことが重要である。このため自衛隊は、従来から二以上の自衛隊が協同する統合訓練を行ってきたが、統合運用体制への移行後は、統合訓練をさらに充実・強化している6

参照 資料77
 
統合演習で海自輸送艦に搭載される陸自高機動車

(3)教育訓練の制約と対応
 自衛隊の訓練は、可能な限り実戦に近い環境において行うよう努めている。そのために、さまざまな施設・設備7を有しているが、制約も多い。
 特に、訓練を行う演習場や空域・海域、射場などが、必ずしも十分な広さとはいえないこと、地域的に偏っていること、使用できる時期や時間に制限があるといった制約8は、装備の近代化などにともない、訓練にますます大きな影響を及ぼす傾向にある。また、実戦的な訓練の一つとして実施する電子戦9環境下での訓練についても、電波干渉の防止の観点から制約がある。
 こうした制約に対応するため、各自衛隊は限られた国内演習場などを最大限に活用しているほか、国内では得られない訓練環境を確保できる米国およびその周辺海域において実射訓練や日米共同訓練を行い、より実戦的な訓練を行うよう努めている。

参照 資料78


 
6)わが国への直接の脅威を防止・排除するための演習である自衛隊統合演習、日米共同統合演習、弾道ミサイル対処訓練などのほか、国際平和協力活動などを想定した国際平和協力演習、捕虜などの取扱いについて訓練する統合国際人道業務訓練などがある。

 
7)たとえば、陸上自衛隊では、連隊・師団レベルの指揮・幕僚活動を演練するための指揮所訓練センター、中隊レベルなどの訓練を行うための富士訓練センターや市街地訓練場などである。

 
8)たとえば、戦車、対戦車ヘリコプター、ミサイル、長射程の火砲、地対空誘導弾(改良ホークやペトリオット)、地対艦誘導弾、魚雷などの射撃・発射訓練については、国内の射場が限られていたり、射程が長いため国内では射撃ができないものがある。また、広大な訓練場を要する大部隊の演習、比較的浅い海域で行う掃海訓練や潜水艦救難訓練、早朝や夜間の飛行訓練などにも、さまざまな制約がある。

 
9)敵の電磁波を探知し、これを逆用し、あるいは、その使用効果を低下させ、または無効にするとともに、味方の電磁波の利用を確保する活動のこと。


 

前の項目に戻る     次の項目に進む