1 自衛官の教育
(1)教育の現状
部隊を構成する自衛官個々の能力を高めることは、部隊の任務遂行に不可欠である。このため、自衛隊の学校や教育部隊などで、階級や職務に応じて段階的かつ体系的な教育を行い、必要な資質を養うと同時に、知識・技能を修得させている。
たとえば、航空機の操縦士や航空管制官などは資格取得までに長い期間にわたる教育訓練を要する。さらに、これらの教育には特殊な技能を持つ教官、装備品や教育施設を整備する必要もあるなど、防衛省・自衛隊として非常に大きな人的・時間的・経費的努力が必要となっている。
また、専門の知識・技能をさらに高める必要がある場合や、自衛隊内で修得するのが困難な場合などには、海外留学を含め、部外教育機関
2、国内企業、研究所などに教育を委託している。
(2)統合教育
統合運用体制をより充実させるためには、統合運用に関する知識・技能が不可欠であり、統合教育はきわめて重要である。そこで自衛隊は、各自衛隊の幹部学校
3などにおける統合教育を充実
4させたほか、上級部隊指揮官または上級幕僚となる幹部自衛官が統合教育を受ける統合幕僚学校
5を主体とする統合教育体系を形成している。
(3)時代に適合した教育
自衛隊の国際的な活動の機会や諸外国とのかかわりは、ますます増大している。このため、前述の教育に加え、英語、ロシア語、中国語、韓国語、アラビア語などの外国語教育を行うとともに、相互理解を目的に留学生を受け入れている。また、国際平和協力活動を迅速かつ継続的に行えるよう、陸上自衛隊(陸自)国際活動教育隊において、全国の陸自派遣要員(主として派遣時の基幹要員)となる者への専門的識能の教育訓練などを行っている。
参照 3章1節1、
資料75、
資料76
2)平成22年度の部外教育機関は、国内では東京工業大学、早稲田大学など、海外では米国国防大学、カリフォルニア州立大学など。
3)各自衛隊の幹部自衛官などに対する、安全保障や防衛戦略などの教育を行う各自衛隊の機関
4)各自衛隊の幹部学校では、統合教育のニーズを明確化して教育内容を見直したほか、統合幕僚学校(統幕学校)との連接を強化するなど効果的な統合教育の実現を図った。
5)統幕学校は、統合幕僚監部に附置される学校で、幹部自衛官に対し統合運用に関する教育を行っている。