第III部 わが国の防衛のための諸施策 

2 9.11テロ以降における動き

(1)日米協議の経緯
 01(平成13)年の9.11テロ以降、図表III-2-2-1に示すように、国際テロ活動や大量破壊兵器の拡散などの新たな脅威の台頭といった安全保障環境の変化に対応するための体制整備が日米両国で進められた。
 日米両国は、02(同14)年12月の日米安全保障協議委員会1(「2+2」会合)において、新たな安全保障環境への対応に際して、日米間で緊密な意見交換を行っていくことが重要であるとの認識のもと、日米間の安全保障に関する協議を強化することを確認し、その後、事務レベルの協議を行ってきた。
 これらの日米協議は、日米同盟の能力を、時代の変化に合わせていかに実効的なものに向上させていくかという観点から、両国間の安全保障に関する戦略的な対話の一環として行われてきた。わが国は、防衛大綱に示された考え方に基づき、「抑止力の維持」と「地元負担の軽減」を基本的な方針とし、わが国の安全保障の問題として、主体的にこの協議に取り組んできた。
 これは、日米同盟が常に強固であり続けるためには、日本の防衛とアジア太平洋地域の平和と安全に対する米国のコミットメントの信頼性と実効性を向上させるとともに、確固たる両国国民の幅広い支持が必要との認識に基づいている。
 こうした基本的考え方を踏まえ、これらの日米協議は、日米同盟の方向性について、日米両国の共通戦略目標の確認にはじまり、共通戦略目標を達成するための日米の役割・任務・能力の検討、そして両国の役割・任務・能力を踏まえた兵力態勢の再編(在日米軍の兵力構成の見直し)の検討というように包括的かつ段階的に整理を行い取り進められた。

ア 共通戦略目標(第1段階)の確認
 地域および世界において、日米が防衛・安全保障面でその達成に向けて協力すべき戦略目標を特定するもので、05(同17)年2月の「2+2」会合の共同発表2において確認された。また、同会合においては、第2段階の日米の役割・任務・能力とともに、第3段階の兵力態勢の再編について集中的に協議を行うこととされた。

参照 本節2

イ 日米の役割・任務・能力(第2段階)の検討
 第1段階において特定された戦略目標を達成するため、日米、特に自衛隊および米軍の役割・任務・能力について、日米の安全保障・防衛政策の近年の発展、成果を踏まえ、検討を行った。
 この検討は、兵力態勢の再編を行う前提として、自衛隊および米軍が十分な調整を行いながら、どのように協力すべきかについて明らかにするものであった。
 その成果として、05(同17)年10月の「2+2」会合において、「日米同盟:未来のための変革と再編」と題する共同文書3が取りまとめられ、日米の役割・任務・能力の具体的方向性などが示された。

参照 本節2

ウ 兵力態勢の再編(在日米軍の兵力構成見直し)(第3段階)
 第2段階における役割・任務・能力に関する検討を踏まえ、それらを具体化するために必要な在日米軍および関連する自衛隊の態勢について、検討を行った。
 この在日米軍再編に関する検討は、「抑止力の維持」と「地元負担の軽減」を基本的な考え方として進められた。
 この検討にあたっては、05(同17)年10月の「共同文書」において示された「指針となる考え方」(図表III-2-2-2 参照)および、在日米軍とこれに関連する自衛隊の部隊の態勢の再編についての具体的な方向性の設定などを踏まえ、06(同18)年5月の「2+2」会合において、「再編の実施のための日米ロードマップ」4(ロードマップ)という形で、最終的な取りまとめがなされ、具体的施策を行うための詳細が示された。
 
図表III-2-2-2 指針となる考え方(概要)

参照 本節2資料38

 その後、07(同19)年5月の「2+2」会合では、ロードマップについて、この1年間の作業の進展が確認されるとともに、着実な実施の重要性が再確認された。

参照 資料40

 これら日米協議の全体像は、図表III-2-2-3のとおりであり、日米協議は段階的な作業の節目ごとに「2+2」会合における日米共同の文書の発表という形で透明性を確保しつつ、その内容を内外に明らかにして進められた。
 
図表III-2-2-3 日米協議の全体像

 また、それ以降に開催された日米首脳会談や日米防衛相会談などの各協議においても在日米軍再編については、ロードマップに従い着実に行っていくことが再確認されているところである。

(2)世界とアジアのための日米同盟
 新たな安全保障環境への対応のための取組の一環として、03(同15)年の日米首脳会談において、日米両国は、グローバルな課題への取組について国際社会と協力しつつ連携を強化することなど「世界の中の日米同盟」を強化することとした。また、06(同18)年11月の日米首脳会談では、「世界とアジアのための日米同盟」との方針のもと、日米関係をさらに強化しつつ、両国が国際社会の諸課題に立ち向かっていくことを確認した。昨年7月の北海道洞爺湖サミット、同年11月のAPEC首脳会議の機会をとらえた日米首脳会談では、日米同盟がアジア太平洋地域の平和と繁栄の礎(いしずえ)であり、これをさらに強化させていくことを確認した。


 
1)日米の安全保障に関する政策協議の場の一つ。日本からは、外務大臣と防衛大臣が、米国からは、国務長官と国防長官が出席する。
(3節1・図表III-2-3-1参照)

 
2)<http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/2+2_05_02.html>参照

 
3)<http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/henkaku_saihen.html>参照

 
4)<http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/g_aso/ubl_06/2plus2_kh.html>参照


 

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