第III部 わが国の防衛のための諸施策 

4 北朝鮮によるミサイル発射事案への対応

 本年3月12日、国際海事機関(IMO:International Maritime Organization)から、わが国を含むIMO加盟国に対し、北朝鮮当局から「試験通信衛星」の打上げのための事前通報があった旨の連絡があった。連絡によれば、北朝鮮当局は、本年4月4日から8日までの毎日11時から16時まで、日本海および太平洋の一部に危険区域を設定したとのことであった。
 政府は、たとえ「人工衛星」であれ、発射が行われた場合、北朝鮮の弾道ミサイル計画に関連する全ての活動の停止を求めている国連安保理決議第1695号および第1718号に違反するものであり、また、朝鮮半島の緊張緩和のための六者会合を含めた努力が行われている中で、地域の安定および平和を損なうものであることから、北朝鮮当局に対し、改めて発射の中止を強く求める旨表明した。
 一方、政府の要請にもかかわらず北朝鮮が発射を行った場合には、わが国領域内に落下するケースは通常起こらないと考えられるものの、万が一に備え、国民生活の安全・安心を期するために可能な限りの措置をとることが必要であった。
 このため、本年3月27日、政府は安全保障会議において北朝鮮からのミサイル発射への対応方針を確認し、防衛大臣は、自衛隊法第82条の2第3項に基づく弾道ミサイル等に対する破壊措置命令を発出した。
 自衛隊は、BMD統合任務部隊を編成し、スタンダード・ミサイルSM-3搭載イージス護衛艦2隻(「こんごう」および「ちょうかい」)を日本海中部へ、ペトリオットPAC-3部隊を東北地方(岩手県および秋田県)および首都圏(埼玉県、千葉県および東京都)に所在する自衛隊の駐屯地などに展開させ、わが国領域への落下に対する備えを行った。
 本年4月5日午前11時30分、北朝鮮から東の方向にミサイル1発が発射され、同11時37分頃には東北地方から太平洋に通過したものと推定された。防衛省においては、早期警戒情報(SEW:Shared Early Warning)や自衛隊の各種レーダーにより得た情報を官邸などへ迅速に伝達した11
 また、自衛隊は、ミサイルの発射直後、航空機により、東北地方の被害の有無を確認するための情報収集を行った。
 本年4月6日、その後の諸般の状況を勘案した結果、防衛大臣は、弾道ミサイル等に対する破壊措置の終結に関する命令を発出し、部隊を撤収させた。
 その後、防衛省においては、北朝鮮が発射したミサイルについて、総合的・専門的分析を行い、その内容を本年5月15日に公表した12

参照 I部2章2節
 
東北地方に展開したPAC-3


 
11)実際の発射の前日には、防衛省・自衛隊の情報伝達の不手際により、発射に関する誤報事案が生起した。実際の発射に際しては、早期警戒情報の有無を統合幕僚長を含めた複数の者で確認するなどして、情報収集や伝達を適切に行った。
http://www.mod.go.jp/j/library/bmd/20090515-1.html>参照

 
12)北朝鮮によるミサイル発射について
http://www.mod.go.jp/j/library/bmd/20090515.html>参照


 

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