特定の通常兵器の軍備管理関連条約など
(1)特定通常兵器使用禁止・制限条約
通常兵器の使用などに関しては、地雷、ブービートラップ
23や焼夷(しょうい)
24兵器などの使用を禁止又は制限する特定通常兵器使用禁止・制限条約(
CCW:Convention on prohibitions or restrictions on the use of Certain conventional Weapons which may be deemed to be excessively injurious or to have indiscriminate effects)
25がある。本条約は、80(昭和55)年に採択され、83(同58)年に発効した。
近年、紛争終了後の爆発性戦争残存物(ERW:Explosive Remnants of War)や一部の対戦車地雷(MOTAPM:Mines Other Than Anti-Personal Mines)がもたらし得る人道上の危険性を減少させるための交渉や検討などが行われてきた。
03(平成15)年11月の締約国会議においては、紛争後のERW(地雷など、他の
CCW議定書で既に規制対象となっているものを除く。)の危険を減少させるための一般的性格の復旧措置(除去責任、情報提供、可能な援助と協力など、一般的予防措置(弾薬の生産や管理など))に関し、議定書が採択された。
また、MOTAPM問題については、わが国は、米国、デンマークなどと共同で、MOTAPMの規制に関する新たな議定書作成の提案を行っている。
防衛庁は、当初の条約の作成と議定書の追加・改正の交渉の場、締約国会議、政府専門家会合などに、随時職員を派遣している。
(2)対人地雷禁止条約
現在も全世界には多くの対人地雷が埋設
26されていると言われている。紛争終了後も放置された対人地雷は、一般市民を含む多くの人々に無差別的な被害をもたらし、ひいては、紛争後の国家の復興と発展を妨げている。このような対人地雷による人道上の問題を解決することを目指し、97(平成9)年、対人地雷禁止条約(オタワ条約)
27が採択され、99(同11)年に発効した。
防衛庁・自衛隊は、この条約に基づき、00(同12)年1月から自衛隊が貯蔵していた対人地雷の廃棄を開始した。条約に定める4年以内の廃棄を着実に履行し、03(同15)年2月、条約で認められた地雷の探知、除去などの技術開発と訓練のための必要最小限の例外的な保有分を除き、すべての対人地雷を廃棄した。
他方、わが国の安全保障を確保するため、条約上の対人地雷に該当せず、一般市民に危害を与えるおそれのない代替手段として、対人障害システムの整備を進めており、当面は指向性散弾(しこうせいさんだん)
28などと併せて対応することとしている。
本年3月現在、この条約は144か国が締結しているが、アジア太平洋地域などでは41か国のうち18か国しか締結しておらず、対人地雷の廃絶を実現するためには、この条約の締約国を増やすことが重要な課題となっている。このため、防衛庁としてもこの条約を締結していないアジア太平洋諸国などに対し、条約の締結を働きかけている。
さらに、防衛庁は、本条約の規定に従い、例外保有などに関する年次報告を国連に対して行うとともに、関連国際会議などに適宜職員を派遣するなど、国際社会の対人地雷問題への取組に積極的に協力している
29。
(3)ワッセナー・アレンジメント
冷戦終結に伴い、94(同6)年に解消された対共産圏輸出規制委員会(
COCOM:Coordinating Committee for Multilateral Strategic Export Controls)
30に代わる新しい輸出管理体制について、93(同5)年から交渉が行われ、96(同8)年、「通常兵器及び関連汎用品・技術の輸出管理に関するワッセナー・アレンジメント」(
WA:Wassenaar Arrangement)
31が正式に発足した。このアレンジメントは、あらかじめ特定の地域を対象とすることなく、1)通常兵器と機微な関連汎用品・技術の移転に関する透明性を増大することとより責任ある管理を実現することにより、地域と国際社会の安全と安定に寄与し、2)テロリストによる通常兵器と機微な関連汎用品・技術の取得を防止することを目的としている
32。参加国は、日本、米国、ロシア、欧州諸国などを含め、本年5月末現在で38か国である。
また、近年、民間旅客機に対するテロの脅威が現実のものとなっている中、携帯式地対空ミサイル(MANPADS:Man Portable Air Defense Systems)の拡散が大きな脅威として認識されており、
WAでは03(同15)年12月に開催された総会において、MANPADSの違法な使用を防ぐための管理強化について合意された。このほか、同総会においては、MANPADSを含む小型武器の武器移転通報リストへの追加、非リスト品目の輸出管理制度の導入など、多くの進展が見られた。
防衛庁は、武器移転の透明性の拡大や上記のようなMANPADSの輸出管理強化を目指した
WA制度の見直し・検討に際し、専門的な助言を行うなどの協力を行っている。
(4)小型武器の非合法取引規制
近年発生している紛争において、主に使用されている小型武器
33は、紛争を激化・長期化させ、一般市民を含む被害者を出している。また、紛争終了後もこの地域に残置されることによって、治安を不安定にし、復興開発を妨げる要因となっている。こうしたことを踏まえ、現在国連を中心に小型武器の非合法取引の規制や過剰蓄積の削減の方途につき検討が行われており
34、わが国はその主導国の1つとなっている。
(5)国連軍備登録制度
国連軍備登録制度は、軍備の透明性の向上をねらいとして、わが国がEC諸国:European Communityなどとともに提案し、91(同3)年の国連総会で採択された「軍備の透明性」決議に基づき発足した。92(同4)年分から制度の運用が開始され、昨年の参加国は115か国となっている。
35
この制度では、7種類の装備品
36について、各国は、その年間輸出入数量、輸出入先などを国連に登録することとなっている。
防衛庁は、毎年、装備品の年間輸入数量を登録するとともに、保有数や国内調達に関する情報も自主的に提供して、より一層の透明性の確保に努めている。また、この制度の改善・強化のために行われている見直しのための専門家会合などに、適宜、防衛庁の職員を参加させている。
26)97(平成9)年国連資料によると約1億1,000万個とされている。他方で、01(同13)年米国務省レポートによると約5,000万個とされており、確定されていない。
28)敵歩兵の接近を妨害するために使用する対歩兵戦闘用爆薬。隊員が目標を視認して作動させるものであり、人の存在、接近又は接触により爆発するように設計されたものではなく、対人地雷禁止条約で禁止されている民間人も無差別に被害を受けるものではない。
32)テロリストによる通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の取得の防止については、9.11テロ後の同年12月総会にて、ワッセナー・アレンジメントの細目を定める基本文書に明記された。
36)7種類の装備品とは、1)戦車、2)装甲戦闘車両、3)大口径火砲システム、4)戦闘用航空機、5)攻撃ヘリコプター、6)軍用艦艇、7)ミサイルとミサイル発射装置をいう。
また、03(平成15)年行われた制度見直しによりMANPADSが「ミサイルとミサイル発射装置」のサブカテゴリー(小項目)として追加登録された。