第4章 国際的な安全保障環境の改善のための主体的・積極的な取組 

多国間の共同訓練

(1)アジア太平洋地域での多国間共同訓練の意義
 00(平成12)年から、アジア太平洋地域では、地域の平和と安定のため、人道支援活動、災害救援、非戦闘員退避活動などにかかわる多国間における協力の基盤づくりを行うよう、それまで行っていた戦闘を想定した訓練に加え、人道支援活動などへの対応を取り入れた多国間での訓練への取組が始まった。具体的には、00(同12)年のリムパックでの難民救援訓練、米国・タイなどが人道支援活動や平和執行活動などに焦点をあて行っているコブラ・ゴールド演習7、シンガポール(00(同12)年)、わが国(02(同14)年)及び韓国(昨年)が主催した西太平洋潜水艦救難訓練などが挙げられる。
 防衛庁・自衛隊としては、このような多国間共同訓練に参加し、また、これを主催することは、自衛隊の各種技量の向上はもとより、関係国間の各種調整や意見交換を通じ、協力の基盤づくりに寄与するものと考えており、引き続き、主体的・積極的に取り組んでいくこととしている。

(2)アジア太平洋地域での多国間共同訓練の主催など

ア 多国間共同訓練の主催など
 わが国が主催するはじめての多国間共同訓練として、02(同14)年4月、海自主催により、西太平洋潜水艦救難訓練8を行った。また、同年10月には、海自が国際観艦式に引き続き、多国間捜索救難訓練9を主催した。捜索・救難訓練は、98(同10)年以降、二国間で行われていたが、多国間の枠組みで行われたのは、この訓練が初めてであった。
 最近、自衛隊が参加している多国間共同訓練は、次表のとおりである。

 
多国間共同訓練の主催など(昨年6月以降)

イ 多国間共同訓練へのオブザーバーの派遣など
 自衛隊は、01(同13)年以降、毎年行われているコブラ・ゴールド演習10に、統幕、各自衛隊及び内局よりオブザーバーとして幹部自衛官などを派遣している。
 他方、わが国が行う二国間訓練などへの諸外国からのオブザーバーの招へいにも取り組んでいる。01(同13)年9月、わが国で行った第4回日露捜索・救難共同訓練には、自衛隊として、はじめて、アジア太平洋地域の8か国から9名のオブザーバーを招へいした。

 
アジア太平洋地域多国間協力プログラムにおける意見交換


 また、陸自は、02(同14)年以降、毎年主催しているアジア太平洋地域多国間協力プログラム(MCAP:Multinational Cooperation program in the Asia Pacific)11に、アジア太平洋地域を中心とした関係各国からオブザーバーを招へいしている。
 最近、自衛隊がオブザーバーを派遣又は招へいしている多国間共同訓練は、次表のとおりである。

 
多国間共同訓練へのオブザーバー派遣など(昨年6月以降)


 
7)本演習は、米国及びタイの二国間訓練として行われていたが、00(平成12)年に、指揮所演習部分にシンガポールが加わり(昨年はフィリピン、モンゴルも参加)、多国間演習となった。このほか、二国間では従来どおり実動演習などが行われた。また、指揮所演習にはアジア太平洋地域諸国から多数のオブザーバーを受け入れている。

 
8)00(平成12)年、シンガポール海軍が主催した第1回西太平洋潜水艦救難訓練に、海自は艦艇2隻を派遣した。
また、02年(同14)の第2回目の訓練には、海自の艦艇3隻を含め、5か国10隻の艦艇が参加し、九州西方海域で、潜水艦救難技術の展示などを行った。

 
9)多国間捜索救難訓練は、関東南方海域などにおいて、海自の艦船が模擬した遭難商船に対して参加国の艦艇などが、捜索・救難を行う手順や共同要領を訓練したものである。
参加国(9か国)
日本、インド、オーストラリア、韓国、シンガポール、タイ、ニュージーランド、フランス、ロシア
オブザーバー参加国(4か国)
カナダ、フィリピン、ベトナム、マレーシア

 
10)これまで、コブラ・ゴ−ルド演習へは、自衛隊よりオブザーバー派遣を行っていたが、防衛庁として演習内容を検討した上で、本年5月に行われたコブラ・ゴ−ルド05に初めて参加した。

 
11)本プログラムは、02(平成14)年に開始され、昨年15か国からオブザーバーの参加を得て行われた。
昨年の参加国:オーストラリア、ブルネイ、カンボジア、中国、インド、インドネシア、マレーシア、モンゴル、パキスタン、フィリピン、ロシア、シンガポール、タイ、米国、ベトナム



 

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