第4章 国際的な安全保障環境の改善のための主体的・積極的な取組 

1 安全保障対話・防衛交流


安全保障対話・防衛交流の意義

 今日の安全保障環境については、01(平成13)年9月11日の米国同時多発テロ(9.11テロ)にみられるとおり、従来のような国家間における軍事的対立を中心とした問題のみならず、国際テロ組織などの非国家主体が重大な脅威となっている。大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散の進展、国際テロ組織などの活動を含む新たな脅威や平和と安全に影響を与える多様な事態への対応は、国家間の相互依存関係の一層の進展やグローバル化を背景にして、今日の国際社会にとって差し迫った課題となっている。
 他方、冷戦終結後10年以上が経過し、米国とロシアの間において新たな信頼関係が構築されるなど、主要国間の相互協力・依存関係が一層進展している。こうした状況の下、安定した国際環境が各国の利益になるとの認識から、国際社会では安全保障上の問題について国際協調・協力が図られ、また、国連をはじめとする各種の国際的枠組みなどを通じた幅広い努力が行われている。
 わが国の周辺においては、冷戦終結後、極東地域におけるロシアの軍事力は量的に大幅に削減されたが、依然として核戦力を含む大規模な軍事力が存在するとともに、多くの国が軍事力の近代化に力を注いでいる。また、朝鮮半島や台湾海峡をめぐる問題など、不透明、不確実な要素が存在している。
 このような安全保障環境の中で、日米安全保障体制(日米安保体制)を基調とする日米両国間の緊密な協力関係は、わが国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定のために、重要な役割を果たしている。
 また、冷戦終結後、安全保障環境を改善させるため、各国がその保有する軍事力や国防政策の透明性を高め、防衛当局者間の対話・交流、各種共同訓練などを通じて相互の信頼関係を深めることで、無用な軍備増強や不測の事態の発生とその拡大を抑えることが重要との認識が広く共有されるようになった。
 近年、更に国家間の相互依存が拡大・深化したことに伴い、二国間及び多国間の連携・協力関係の充実・強化が図られている。
 このような情勢の下、わが国の平和と安全を確保するためには、適切な防衛力を整備し、日米安保体制を堅持するとともに、国際社会、特に、アジア太平洋地域で、より安定した安全保障環境を構築することがますます重要となっている。防衛庁・自衛隊は、この地域における関係諸国との連携・協力関係の充実・強化を図る上で、関係諸国との二国間交流やASEAN(アセアン)地域フォーラム(ARF:ASEAN Regional Forum)などの多国間の安全保障対話、多国間の共同訓練などを重視しており、今後とも、関係諸国の動向をも見極めつつ、その内容を深め、幅を広げることで、安全保障環境の改善に向けて積極的に取り組むこととしている。

 
安全保障対話・防衛交流

 

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