第2章 わが国の防衛政策の基本と新防衛大綱、新中期防など 

日米政策協議

(1)日米間の主要な協議の場
 日米間の安全保障に関する政策の協議は、通常の外交ルートによるもののほか、「2+2」会合、日米安全保障高級事務レベル協議(SSC:Security Subcommittee)、防衛協力小委員会(SDC:Subcommittee for Defense Cooperation)など防衛・外務などの関係者によって各種のレベルで緊密に行われている。これら協議の枠組みは次表のとおりである。

 
安全保障問題に関する日米両国政府の関係者間の主な協議の場

 さらに、防衛庁としては、防衛庁長官と米国防長官との間で日米防衛首脳会談を適宜実施しており、両国の防衛政策や防衛協力に焦点をあて協議を行っている。
 また、防衛庁の実務レベルにおいても、日米安保体制の下、米国防省などとの間で随時協議を実施し、必要な情報の交換などを行っており、近年、日米の防衛協力が進んだことにより、これらの機会は一層重要になってきている。
 このように、あらゆる機会とレベルを通じ、日米間において情報と認識を共有していくことは、日米間における一層の連携強化・緊密化につながり、日米安保体制の信頼性の向上に資するものであるとして、防衛庁としても主体的に取り組んでいる。

(2)近年の日米政策協議(2004年以降)
 昨年11月、訪米した大野防衛庁長官とラムズフェルド国防長官との間で実施された日米防衛首脳会談においては、イラク復興支援に関し、治安問題について意見交換がなされ、ラムズフェルド国防長官から自衛隊の活動を評価する旨の発言があった。在日米軍の軍事態勢見直しについては、大野防衛庁長官から、日米両国間で情勢認識、役割・任務について議論することの重要性について述べ、在日米軍の再編においては抑止力の維持と地元の負担の軽減への配慮が必要であり、特に沖縄については国内外への移転が考えられる旨を発言した。ラムズフェルド国防長官からは、基地の問題はセンシティブであり時間を要するため、両国で国際情勢認識を共有して国民の理解を得ていくことが必要との発言があった。このほか、地域情勢については、中国潜水艦の日本領海侵犯に言及し、ラムズフェルド国防長官から、中国が国際秩序に平和的に参画するよう促していきたいとの発言があった。

 
日米防衛首脳会談における大野防衛庁長官とラムズフェルド国防長官(本年6月)

 05(同17)年2月19日、米国ワシントンにおいて、大野防衛庁長官とラムズフェルド国防長官との間で日米防衛首脳会談が実施された。両長官は、北朝鮮情勢について、核兵器の保有を宣言した先般の北朝鮮外務省の声明は核不拡散体制への深刻な挑戦であり、北東アジア地域の平和と安定に対する直接の脅威であるとの認識を共有し、六者会合を通じた核問題の平和的解決を目指していくとの基本方針を確認した。ミサイル防衛については、大野防衛庁長官からミサイル防衛システムの整備に必要な法整備に向けた努力について紹介し、両長官は、実効的なシステム運営に向けて両国が情報面などの協力を深化することで同意した。また、大野防衛庁長官は、米国が日米共同技術研究を06年度から開発に移行したい旨表明していることを歓迎した。さらに、両長官は、国際的な安全保障協力については、テロとの闘いやイラク人道復興支援などの実績を踏まえ、国際的な課題に対する国際社会の取組の中で、日米が協力を深化させていくことの重要性を認識した。これに加え、大野防衛庁長官から、本来任務化の検討を含め、国際平和協力活動に積極的に参加していく旨発言したところ、ラムズフェルド国防長官からは歓迎する旨発言があった。また両長官は、在日米軍の兵力構成の見直しについては、日米間における協議を更に加速することに合意した。
 また同日、大野防衛庁長官、ラムズフェルド国防長官及び町村外務大臣、ライス国務長官との間で02(同14)年12月以来、約2年ぶりに「2+2」会合が実施された。イラク人道復興支援、テロとの闘い、スマトラ島沖地震・津波被害への救援などのグローバルな課題において、日米間で緊密な協力が実施されていることを確認し、北朝鮮情勢、拉致問題、中国情勢、中台関係などの情勢を踏まえつつ、東アジアにおける安全保障環境に関する意見交換を行った。
 さらに、共通の戦略目標についての日米間のこれまでの協議を踏まえて、共同発表において、日米共通の戦略目標14を確認し、今後数ヶ月の間、自衛隊と米軍との役割・任務・能力、相互運用性及び在日米軍の兵力構成見直しについて協議を行うことで双方の認識が一致した。在日米軍の安定的な駐留については、日米地位協定の運用改善及びSACO最終報告の着実な実施が重要であることを確認した。
 その後、大野防衛庁長官は、本年6月、第4回IISSアジア安全保障会議(IISS:国際戦略研究所(英国)主催)出席のため訪問中のシンガポールにおいて、ラムズフェルド米国防長官と会談を行い、自衛隊と米軍の役割・任務・能力や在日米軍の兵力構成に関する今後の日米協議などについて意見交換を行った(後述)。
 ラムズフェルド国防長官より、わが国が行っているイラク人道復興支援特措法に基づく活動及びテロ対策特措法に基づくインド洋における自衛隊の活動について、日本の協力は大変重要であり、米側としても感謝している旨の発言があった。
 テロとの闘いについては、ラムズフェルド長官により、海上阻止活動は大変効果的であり、多くの国との協力により、抑止効果を生み出しており、テロリストの活動コストが増大しているとの発言があった。
 このほか、中国の国防費に関する透明性の問題などにつき意見交換行われた。
 また、閣僚レベルのみならず、日米の審議官級の実務者レベルにおいても、随時協議を実施し、より具体的・専門的な議論や意見交換を行っている。


 
14)日米の共通の戦略目標については、本節3参照


 

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