第1章 わが国を取り巻く安全保障環境 

4 アジア太平洋地域のロシア


全般
 ロシアは最長部分で東西1万キロに及ぶ長大な国家であり、西はヨーロッパ東部に面する一方で、東はベーリング海やオホーツク海、日本海などの太平洋側の海につながるとともに、中国や北朝鮮、モンゴルと国境を接している。ウラル山脈以東の地域は全ロシアの約7割を占める面積を有しているが、人口密度は希薄で、過酷な自然条件のため、生活環境も厳しく、近年、人口の減少傾向が続いている。
 他方、この地域は、石油や天然ガスなどの地下資源が豊富であり、ロシアは現在、シベリアの石油を極東方面に運ぶパイプラインの事業化計画やサハリンの天然ガス開発などを進めている。ロシアにとっては、これらの地下資源の開発や地域の経済・社会基盤活性化のために、わが国や中国などのアジア太平洋地域の国々との経済関係の強化が重要である。このため、ロシアは、対外政策においてもアジア太平洋地域の国々との関係を重視し、アジア太平洋経済協力(APEC:Asia-Pacific Economic Cooperation)会議、ASEAN地域フォーラム(ARF)、上海協力機構などの地域的な枠組みへ参加してきているほか、昨年、東南アジア友好協力条約(TAC)に加盟した。また、プーチン大統領は、アジアの国々と活発な首脳外交を行っており、00(平成12)年の大統領就任以来、中国、インドの首脳と毎年相互訪問を継続している。さらに、ロシアは、この地域の平和と安定はロシアにとっても重要であることから、自国の影響力を確保するため朝鮮半島問題などの地域問題解決に積極的に関与していくとしている。

 
わが国に近接した地域におけるロシア軍の配置


 

前の項目に戻る     次の項目に進む