第6章 今後の防衛庁・自衛隊のあり方 

BMDシステム整備決定に至る経緯

 00(同12)年に閣議決定された「中期防衛力整備計画(平成13年度〜平成17年度)」2においては、「弾道ミサイル防衛(BMD)については、海上配備型上層システムを対象とした日米共同技術研究を引き続き推進するとともに、技術的な実現可能性などについて検討の上、必要な措置を講ずる。」こととされた。
 一方、米国は従来より様々なミサイル防衛システムの研究開発を推進していたが、地上配備型の地対空誘導弾ペトリオット・システム(PAC-3:ペトリオット能力改善3型:Patriot Advanced Capability-3)3は、すでに迎撃試験で多くの成功を収め、また、イージス艦4による海上配備型ミッドコース防衛システムについても、良好な結果が得られた。米国は、このような試験結果などを受けて、02(同14)年12月、04(同16)年から05(同17)年にかけてBMDシステムの初期配備を行うことを決定した5。なお、PAC-3は昨年の米英軍などによる対イラク武力行使の際にも投入された。
 わが国政府としては、以上の米国における迎撃試験、各種性能試験などの結果やわが国独自のシミュレーションによって、BMDシステムの技術的実現可能性は高いと判断し、また、BMDが専守防衛を旨とするわが国防衛政策にふさわしいものであることを踏まえ、昨年12月19日安全保障会議と閣議において「弾道ミサイル防衛システムの整備等について」6を決定し、同システムを整備することとした。なお、その際、BMDシステムの整備に関する政府の考え方について、官房長官談話が発表された7
 今般政府が整備を決定したBMDシステムは、弾道ミサイル攻撃に対して国民の生命・財産を守るための純粋に防御的な、かつ、他に代替手段のない唯一の手段であり、専守防衛を旨とするわが国の防衛政策にふさわしいものである。また、それ自体が攻撃能力を有することはなく、周辺諸国に脅威を与えるものではない。憲法上行使を禁じられる集団的自衛権との関係については、同システムはあくまでもわが国を防衛することを目的とするものであって、わが国自身の主体的判断に基づいて運用し、第3国の防衛のために用いられることはないことから問題は生じない。
 
海上配備型ミッドコース防衛システムの運用構想図



 
2)資料13参照。

 
3)ペトリオット・システムは、経空脅威に対処するための防空システムの一つ。PAC-3は、主として航空機を迎撃目標としていた従来型のPAC-2と異なり、主として弾道ミサイルを迎撃目標とするミサイル。

 
4)目標の捜索、探知、分類識別、攻撃までの一連の動作を高性能コンピュータによって自動的に処理するイージス防空システムを備えた艦艇をいう。

 
5)本節2参照。

 
6)資料61参照。

 
7)資料62参照。


 

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