第6章 今後の防衛庁・自衛隊のあり方 


解説 防衛大綱策定以降の国際的な任務・活動の変遷について

1 防衛大綱における国際的な任務・活動に関する記述
 防衛大綱が策定された1995(平成7)年12月の時点では、自衛隊の国際的な任務として、既に国際平和協力法(いわゆるPKO法)や国際緊急援助隊法が成立しており、また、将来的な周辺事態への対応も視野に入れて、「より安定した安全保障環境への貢献」が防衛力の役割の一つとして明記された。

2 周辺事態安全確保法、船舶検査活動法
 その後、99(同11)年5月に周辺事態安全確保法が、00(同12)年12月に船舶検査活動法が成立したが、両法律とも、あくまで周辺事態、すなわち、「そのまま放置すればわが国に対する直接の武力攻撃に至る恐れのある事態などわが国周辺地域におけるわが国の平和と安全に重要な影響を与える事態」を対象としており、「日本周辺での活動」、「日本の平和と安全の確保に資すること」が目的、「支援の対象は専ら米軍に限定」との要素により特徴づけられている。

3 テロ対策特措法など
 一方、01(同13)年11月に成立したテロ対策特措法は、「わが国を含む国際社会の平和と安全の確保に資すること」が目的であり、同年9月11日の米国における同時多発テロによる「国際の平和と安全に対する脅威」にどう対処するかという問題であるため、戦闘地域以外という制約を除き、原則地域的な限定はなく、グローバルな活動である。また、支援の対象は米軍に限られるものではなく、法律の目的に合致する活動を行う米軍以外の諸外国の軍隊も含まれている。また、PKO法とも異なり、停戦合意などはなく、戦闘が継続している状況の下での支援が活動の前提となっている。さらに同法では、武器使用権限も「自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員」の防護だけではなく、「自己と共に現場に所在」し、「その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」の防護が追加され、自衛隊の庇護下にある難民や傷病兵、さらに、他国軍隊の兵員で、その現場において、生命・身体の安全確保につき自衛官の指示に従うことが期待される者も防護し得るようになり、運用の柔軟性が確保されてきている。なお、PKO法においても、その後、同様の防護対象の拡大が行われた。
 さらに、本年6月に閣議決定され国会に提出されたイラク人道復興支援特措法案は、「イラクの国家の再建を通じてわが国を含む国際社会の平和と安全の確保に資する」ことが目的となっている。このように、これらの法律・法案は、いわばわが国の安全に直結する事態への対処のみならず、国際社会全体の平和と安全への貢献が求められる時代になってきていることを反映したものと考えられ、自衛隊の活動する場面や役割は多様化してきている。

4 今後の課題
 昨年12月、福田内閣官房長官の私的懇談会である国際平和協力懇談会の報告書1が公表された。この中では「自衛隊法を改正し、国際平和協力を自衛隊の本務として位置づけるとともに、適時適切な派遣を確保するため、自衛隊の中に即応性の高い部隊を準備する」との提言がなされた。さらに、『国連決議に基づくいわゆる「多国籍軍」へのわが国の協力(例えば、医療・通信・運輸などの後方支援)について一般的な法整備の検討を開始する』ことも提言された。小泉総理はイラク人道復興支援特措法の審議の中で、国際協力に関する一般的な法整備について、与党内でも議論があり、今後、将来の課題として、いろいろ国民的な議論を踏まえながら検討すべき問題であると述べているが、これらの提言も真摯に受け止めつつ、防衛庁・自衛隊の国際的な役割やあり方について、今後、いかに考えていくかといったことも大きな課題である。



 

 

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