第4章 より安定した安全保障環境の構築への貢献 


解説 国際平和協力懇談会の提言

 国際平和協力を取り巻く環境は年々変化している。昨年5月、小泉総理は、出張先のシドニーでの講演で、紛争に苦しむ国々に対して、平和の定着や国づくりのための協力を強化し、わが国の国際協力の柱とするための検討を行う旨を述べた。
 これを受けて、福田内閣官房長官の下の懇談会として、16人の有識者(座長:明石康元国連事務次長)で構成する「国際平和協力懇談会」が設けられ、6回にわたる会合を経て、同年12月、報告書がとりまとめられた。

〔報告書の概要〕
 国家間の戦争を防止するだけでは、平和の探求として不十分であり、特に冷戦終了後は国境の壁を越えて行われる大規模な暴力や内戦、テロへの対処が必要である。また、脅威の伝播が極めて迅速なため、自国の安全のためにも世界的な活動が必要である。
 このような国際社会の現状の中で、世界の平和と安全を維持するために、国連を中心とする伝統的な平和維持活動だけでは十分ではなく、脆弱な停戦をより持続的な平和に移行させ、また、内戦によって荒廃した社会の安定を回復させることが必要である。
1 わが国の国際平和協力の現状と課題
 戦後、わが国には根強い平和主義が育っているが、それはともすると観念的・受動的なものになりがちであった。10年前のカンボジア国連平和維持活動への参加以来、わが国の国際平和協力は徐々に拡大してきているが、他の先進国と比較するとその規模や展開能力に大きな落差があり、それを縮めるため一層の努力が望まれている。
2 国際平和協力の改善・強化のための方策−提言−
 国際平和のためにわが国がより積極的、包括的、弾力的な協力をすることは緊急の課題であり、国としての基本業務に位置づけるべきである。そのための制度の見直し及び具体的な施策の改善・充実を推進するために以下の提言を行う。
(以下、防衛庁・自衛隊関係部分のみ抜粋)
○ より柔軟な国際平和協力の実施に向けての早急な法整備
・ PKO参加5原則に関し、そもそも停戦合意や受入れ同意が意味をなさない場合、例えば国連安保理決議をもって参加を可能とする。
・ 国際平和協力業務において、「警護任務」「任務遂行を実力をもって妨げる試みに対する武器使用(いわゆるBタイプ)」を可能とする。
・ 国連平和維持活動の機動的展開を目的とする国連待機制度への参加を実現する。
・ 自衛隊法を改正し、国際平和協力を自衛隊の本務として位置づけるとともに、適切な派遣を確保するため、自衛隊の中に即応性の高い部隊を準備する。
○ より幅広い平和協力活動への取組
・ 国連決議に基づき派遣される多国間の平和活動(いわゆる多国籍軍)へのわが国の協力(例えば、医療、通信、輸送などの後方支援)について法整備の検討を開始する。


 

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