第5章 国民と防衛 

装備品の国産化を通じた防衛生産・技術基盤の充実強化

(1)国産化の意義
 工業力の十分発達した先進国は、一般的に装備品の自主的な開発と国産に努めている。わが国でも、装備品の自主開発、国産化は、1)わが国の国土、国情に最も適した装備品の取得、2)高い技術力の保持、3)装備品の安定供給、4)緊急時の急速取得、5)維持・修理・補給などの後方支援機能の保持の容易性、6)外国の装備品を導入する際の相手国に対する交渉力の保持などの観点から重要である。

 
F-2支援戦闘機を組み立て中の民間企業の生産ライン(本年2月 愛知県)

(2)防衛生産・技術基盤の現状と充実強化のための取組
 防衛産業をめぐる環境については、近年、国家の財政事情が一層厳しさを増すとともに、装備品などの調達数量が減少する傾向にある一方、情報通信技術を中心とした技術革新の進展などの変化が見られる。
 このような中で、防衛産業は人員の再配置、製造部門の分社化や営業譲渡などの合理化・効率化や設備投資の抑制を進めている。しかし、特殊な技術と設備を必要とする防衛の分野では、ひとたびその基盤を失うと、回復には長い年月と多くの費用を要する。したがって、厳しい環境の下で、いかに健全かつ効率的な防衛生産・技術基盤を充実強化していくかは、これまで以上に重要な課題である。
 このような観点から、防衛庁は、各界の有識者からなる「防衛産業・技術基盤研究会」を通商産業省(現経済産業省)と共同で開催し、2000(平成12)年、報告書1を取りまとめた。現在、債権流動化2の容認、装備品又は部品の共用化・ファミリー化、民生品・民生技術の活用3、「研究開発の実施に関わるガイドライン」(研究開発ガイドライン)の策定など、同報告書に盛り込まれた提言の実施を図っている。



 
1)報告書では、
 1)全般的な方向として、装備の自主的な開発と国産の推進を今後とも原則とする、
 2)防衛産業基盤の関連施策として、産業基盤の維持、効率的・効果的な調達補給の推進、装備品の取得に関する考え方の明確化、企業体質強化の推進と防衛産業の効率化、
 3)防衛技術基盤の関連施策として、技術基盤の維持・育成、効率的・効果的な研究開発の推進、評価体制を含む研究開発に関する体制と実施のあり方の見直し、装備・技術面での日米協力の強化、重点技術分野の明確化などが提言されている。
「防衛産業・技術基盤の維持・育成に関する基本的方向」
http://www.jda.go.jp/j/delibe/bo-san/tyukan/index.html

 
2)本節5参照。

 
3)例えば、CCDカメラ技術のミサイル・シーカーへの活用、液晶技術のF−2操縦席用ディスプレイへの活用など。


 

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