第5章 国民と防衛 

技術研究開発態勢の充実

 科学技術の進展に伴う、兵器とそのシステムの高性能化は、戦術・戦法から戦略にまで大きな影響を与え得ることから、装備品などの技術的水準を将来にわたって維持・向上させることは特に重要である。
 近年、景気の後退、防衛装備品の調達額の抑制傾向に伴う技術者削減など、防衛産業における研究開発環境の変化により、防衛庁の研究開発の円滑な実施に懸念が生じかねない状況にある。このような中でも、高い水準の防衛技術を維持する必要があることから、防衛庁は、ライフサイクルコストの抑制に十分配意しつつ、装備品などの開発や技術実証型研究を含む各種研究を行っている。さらに、より一層効果的・効率的な研究開発を行うとの観点から、01(同13)年2月に「研究開発ガイドライン検討委員会」を設置し、同年6月に今後の技術研究の実施のあり方や研究開発体制の見直しなどの方向を示した研究開発ガイドライン1を策定した。

(1)研究開発ガイドラインの概要
ア 基本的な考え方
 優れた民生技術を積極的に導入・応用し、民間技術力のみに依存できない技術分野については、適切な基盤の維持育成を図る。また、わが国の独自性を必要とする技術分野については、引き続き自主的な取組を行う一方、米国との技術協力を促進するというものである。

 
札幌試験場におけるエンジン高空性能試験装置によるエンジンの試験状況(昨年12月 北海道東千歳市)

 
技術研究本部で研究中の最先端技術

 
第3研究所において研究中の実証エンジン(1998(平成10)年6月 東京都立川市)

 
魚雷用誘導制御装置(イメージ図)

イ 今後の取組
1) 防衛技術分野で重点的に取り組むべき分野
 防衛の成否への影響などが高いIT分野、無人機技術、誘導関連技術、戦略的取組が必要な航空機用エンジン技術、アビオニクス技術など。そのほか、統合的な運用に資するものについても重視するとともに中長期的な技術見積の作成を検討する。
2) 研究開発実施の多様化
 国内の他研究機関、例えば国立試験研究機関、独立行政法人、大学などとの連携を強化する。また、米国と技術交流をより一層促進するとともに、米国以外の諸外国とも技術交流を促進する。
3) そのほか、研究開発評価の充実強化、技術研究本部の体制の見直しなど
ウ フォローアップ
 毎年度フォローアップを行い、研究開発ガイドラインに掲げた各種施策の進捗状況と課題を検討し、その的確な推進を図ることとしている。

(2)施策の進捗状況
1) 本年4月、技術研究本部の企画立案機能を強化するため、企画部門の組織改編を行った。
2) 本年2月、日米装備・技術定期協議(S&TF)において、今後の日米装備・技術協力を更に活発化させるため、S&TFの構造見直しを行うとともに、安全保障分野での他の日米間の枠組との有機的な連携を図っていくことが確認された。
3) 本年5月、日米の防衛当局間で実施する「科学技術者交流計画(ESEP:Engineers and Scientists Exchange Program)」に関する日米政府間取極を締結した。
4) 01(同13)年11月の「国の研究開発評価に関する大綱的指針」も踏まえ、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」に基づく政策評価と整合するように取り組むものとして、昨年3月、研究開発評価指針2を策定し、これに基づき研究開発評価の試行を開始した。この試行を踏まえ、評価制度を確立すべく検討を行っている。
5) 昨年4月、研究開発評価指針に対応して、技術研究本部内の評価体制の拡充などを図るため、評価部門の組織改編を行った。

 
防衛庁において開発が完了した主要な装備品など

 
防衛庁において開発中の主要な装備品など



 
1)「研究開発の実施に関わるガイドライン」
http://www.jda.go.jp/j/library/archives/kenpatu/index.html

 
2)「防衛庁研究開発評価指針」
http://www.jda.go.jp/j/library/archives/kaihatsu/index.html


 

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