第4章 より安定した安全保障環境の構築への貢献 

アジア太平洋地域での多国間共同訓練の主催など

(1)多国間共同訓練の主催など
 海自は、昨年4月から5月上旬にかけて、第2回西太平洋潜水艦救難訓練を主催した。この訓練は、わが国が主催するはじめての多国間共同訓練であり、九州西方海域で、潜水艦救難技術の展示などを行った1
 また、昨年10月には、海自が国際観艦式に引き続き、多国間捜索救難訓練を主催した。この訓練には、海自の艦艇9隻を含め、9か国18隻の艦艇が参加するとともに、オブザーバーとして4か国2が参加した。二国間の捜索・救難訓練は、98(同10)年から行われていたが、多国間の枠組で行うのは、今回がはじめてであった。本訓練は、関東南方海域などにおいて、海自の艦艇が模擬した遭難商船に対して参加国の艦艇などが、捜索・救難を行う手順や共同要領を訓練したものである。また、本訓練に多くの国が参加して成功裡に終了したことにより、捜索救難活動に焦点を当てた訓練が、今後の多国間共同訓練の形態の1つとなり得ることが確認できた。

(2)多国間共同訓練へのオブザーバーの派遣など
 自衛隊は、本年5月、米軍、タイ軍を主体(シンガポール軍は指揮所演習の部分にのみ参加)とし、タイで行われた共同訓練(コブラゴールド03)3に統幕や陸自の幹部自衛官などを01(同13)年、昨年に続きオブザーバーとして派遣した。また、空自は、昨年9月、カナダ、米国、ロシアが参加して、カナダで行われた共同訓練(北極地域捜索救難訓練2003)に幹部自衛官をオブザーバーとして派遣した。
 なお、オブザーバーについては、派遣のみならず、わが国が行う二国間訓練などへの諸外国からの招へいにも取り組み始めた。特に、01(同13)年9月、わが国で行った第4回日露捜索・救難共同訓練4には、防衛庁・自衛隊として、はじめて、アジア太平洋地域の8か国から9名のオブザーバーを招へいした。
 また、昨年11月、陸自としてはじめてオブザーバー5を招へいし、アジア太平洋地域多国間協力プログラム(MCAP02:Multinational Cooperation program in the Asia Pacific 2002)を主催した。本プログラムにおいて、各国オブザーバーは、日米共同訓練の実施状況や富士学校などを研修した。また、アジア太平洋地域における陸軍種間の多国間協力に関する意見交換では、平和維持活動、人道支援・災害救助活動といった分野について、参加各国が共通の関心を有していることが確認された。

 
MCAP02において衛生部隊の訓練を研修する各国オブザーバー(昨年11月 埼玉県朝霞訓練場)



 
1)2000(平成12)年、シンガポール海軍が主催した第1回西太平洋潜水艦救難訓練に、海上自衛隊は艦艇2隻を派遣した。
 また、昨年の訓練には、海自の艦艇3隻を含め、5か国10隻の艦艇が参加した(平成14年版防衛白書4章3節2参照)。
http://jda-clearing.jda.go.jp/kunrei/w_fd/2002/column/frame/ak144004.htm

 
2)多国間捜索救難訓練
参加国:日本、インド、オーストラリア、韓国、シンガポール、タイ、ニュージーランド、フランス、ロシア
オブザーバー参加国:カナダ、フィリピン、ベトナム、マレーシア

 
3)1章3節5参照。

 
4)海自艦艇2隻、露艦艇1隻が参加した。

 
5)参加国:米国、インドネシア、オーストラリア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ラオス、ロシア
(カナダ、韓国、ブルネイは、意見交換に在京武官などが参加)


 

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