核兵器開発疑惑 北朝鮮は、従来、核兵器開発の疑惑(注1−104)が持たれていたが、93(同5)年、IAEA(International Atomic Energy Agency)の特別査察要求を拒否し、同年、NPT(Nuclear Non-Proliferation Treaty)からの脱退を宣言したことにより、ヨンビョンに所在する黒鉛減速炉などを用いた核兵器開発を行っているのではないかとの疑惑がさらに深まった。この問題については、94(同6)年に署名された米朝間の「枠組み合意」により、話合いによる問題解決の道筋が示された。「枠組み合意」によれば、米国は、北朝鮮への軽水炉及び代替エネルギー供与などのための諸施策を講じ、これに対し、北朝鮮は、ヨンビョンなどに所在する黒鉛減速炉及び関連施設を凍結し、最終的には解体するとともに、NPT締約国にとどまり、軽水炉が完成される前にIAEAとの保障措置協定を完全に履行(注1−105)することなどとなっている。すなわち、「枠組み合意」においては、北朝鮮に将来の核兵器開発を放棄させるとともに、軽水炉が完成する最終段階において、過去の核兵器開発疑惑も解明されるしくみとなっている。 「枠組み合意」に基づき、95(同7)年以降、米国が北朝鮮に対する代替エネルギーとしての重油を供給してきたほか、軽水炉の供与などを実施する機関としてKEDO(Korean Peninsula Energy Development Organization)が設立された。その後、「枠組み合意」に基づく各種事業が逐次進捗(しんちょく)している(注1−106)。 一方、98(同10)年、北朝鮮が、同国北西部のクムチャンニにおいて、核関連の地下施設を秘密裏に建設中ではないかとの疑惑が浮上した。米朝間で累次の協議が行われた結果、疑惑解明のためのこの施設への米国側の訪問が99(同11)年に行われ、その結果、当該時点では、この施設は、「枠組み合意」に違反していない旨の報告が同年に発表されている。さらに、昨年5月には、米国側によるこの施設への2回目の訪問が行われ、前回の訪問以来、状況は変わっていない旨の発表がなされている。 北朝鮮の核兵器開発疑惑は、日本の安全に影響を及ぼす問題であるのみならず、大量破壊兵器の不拡散の観点から国際社会全体にとっても重要な問題である。本問題の解決には、北朝鮮が「枠組み合意」などの合意内容を誠実に履行することが重要であり、今後とも、その対応を注意深く見守っていくことが必要である。