在日米軍施設・区域の安定的な使用を確保することは、日米安保条約の目的を達成するために不可欠であるが、その一方、沖縄県には在日米軍の施設・区域が集中しているため、その整理・縮小が県民から強く要望されている状況にある。
日米両国は、県などの要望の強い事案を中心に、これまで継続的に努力を行ってきた。その結果、沖縄復帰時に83施設、約278km2であった施設・区域(米軍専用)は、本年1月現在、38施設、約235km2となっている。しかしながら、依然として、面積にして在日米軍施設・区域の約75%が沖縄県に集中し、これは、県面積の約10%、沖縄本島の約18%を占めている。
また、昨年9月におきた米軍人による女子児童暴行事件や沖縄県知事が駐留軍用地特措法に基づく署名・押印を拒否したことなどを契機として、全国的にも基地問題に対する世論の関心が高まった。
これらのことから、政府は、沖縄県に所在する施設・区域に係る諸問題について協議することを目的として、昨年11月、国と沖縄県との間に「沖縄米軍基地問題協議会」を、日米間に「沖縄における施設及び区域に関する特別行動委員会」(SACO)を設置した。さらに防衛庁でも、これらの協議会における検討を推進するため、庁内に「在日米軍基地に関する特別委員会」を設置した。
SACOでは、設置後1年をめどに、在日米軍施設・区域の整理・統合・縮小などのための具体的な措置に関する検討結果を取りまとめることとされており、その中間報告が、本年4月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で了承された(第10図参照)。
これらの問題解決のためには、移転先地の関係自治体はもとより、国民全体の理解と協力が不可欠であり、政府としては、このような観点から最大限の努力を行っているところである。
イ沖縄における施設・区域の使用権原の取得
在日米軍の使用する施設・区域内の民有地及び公有地については、所有者との合意の下、賃貸借契約を締結することにより、安定的な使用を確保することとしている。しかし、一部の土地については、所有者との間で契約の合意が得られないため、駐留軍用地特措法を適用して、現在使用しているところであるが、その使用期間は来年5月に満了することとなっている。また、賃貸借契約により使用権原を得ていた楚辺通信所の一部の土地については、本年3月に契約期間が満了することとなっていた。
政府としては、これらの土地のうち引き続き在日米軍施設・区域として提供する必要のある土地について、賃貸借契約を締結できるよう鋭意努力してきたところである。しかし、嘉手納飛行場、楚辺通信所など13施設の一部の土地については契約の合意が得られなかったため、昨年3月、やむを得ず、駐留軍用地特措法に基づく使用権原取得の手続きに着手し、現在、沖縄県収用委員会において裁決申請に係る手続きが進められているところである。
今後、公告・縦覧を始めとする裁決申請に係る審理などの手続きが円滑かつ迅速に行われ、速やかに裁決がなされることが期待されるところであり、政府としては、引き続き地元及び関係者の理解と協力が得られるよう、最大限努力していくこととしている。
山口県に所在する岩国飛行場は、米海兵隊及び海上自衛隊が使用している。政府としては、地元岩国市などの要望を受け、岩国飛行場における運用上、安全上及び騒音上の問題を解決し、同飛行場の安定的使用を図るため、滑走路を東側(沖合)へ1,000m程度移設する事業を推進することとした。93年度(平成5年度)以降、政府は、地元関係漁協の同意を得るとともに、環境アセスメントに係る事務や埋立承認手続などを行い、本年度から工事を開始することとしている。
イ空母艦載機の着陸訓練場の確保
空母艦載機の着陸訓練は、これまで主として厚木飛行場で行われてきているが、同飛行場周辺は市街化していることから、米軍にとっては訓練の制限などの問題が、周辺住民にとっては深刻な騒音問題が生じている。これらの問題を解決するため、政府は、三宅島に飛行場を設置することが適当と考え、そのための努力を続けている。しかし、三宅村当局を始め地元住民の間に、なお反対の意向が強く、実現までには相当の期間を要すると見込まれるため、暫定措置として硫黄島を利用することとした。
政府としては、今後とも暫定措置として、硫黄島での艦載機着陸訓練の実施に努めるとともに、三宅村当局及び地元住民の理解と協力が得られるよう努力しているところである。