〔第3節〕より安定した安全保障環境の構築への貢献


国際平和協力業務

    1992年(平成4年)の「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」(国際平和協力法)の成立後、自衛隊は、カンボディア、モザンビーク、ザイールなどへ部隊などを派遣し、現在は、ゴラン高原に部隊などを派遣している。

(1) 自衛隊参加の仕組み

    国連平和維持活動は、国連決議に基づき、武力紛争当事者間の停戦合意の遵守の確保など、紛争に対処して国際の平和と安定を維持するため、国連の統括の下に行われる活動である。人道的な国際救援活動は、国連決議又は国際機関の要請に基づき、紛争による被災民の救援や被害の復旧のため、人道的精神により各国が実施するものである。
    国際平和協力法は、国連平和維持活動及び人道的な国際救援活動に対し適切かつ迅速な協力を行うための国内体制を整備することにより、人的な面を中心に、より積極的に国際平和のための努力に寄与することを目的としている。
    自衛隊の部隊などによる、いわゆる平和維持隊本体業務については、国際平和協力法の国会審議の過程で、別途法律で定める日までの間は、これを実施しないこととされた(いわゆる凍結)。このため、自衛隊の部隊としては当面、平和維持隊の後方支援業務及び人道的な国際救援活動への協力を行うこととなっている。

(2) これまでの教訓・反省

    自衛隊は、これまでの国際平和協力業務を通じ、多くの教訓を得た。これまでの主要な教訓・反省事項として、個々の隊員の判断によるものとされている武器使用について隊員の心理的負担が大きかったことなどが挙げられる。

(3) 国際平和協力法の見直し

    昨年8月、本法律が施行後3年を経過したことから、同法に基づき、その実施の在り方について見直しが開始された。見直しに当たっては、さまざまな観点から検討を行うこととしており、武器使用の問題に関しても慎重に検討が行われている。

(4) 自衛隊の実施する国際平和協力業務に関する議論

    自衛隊の実施する国際平和協力業務に関して、次のような議論があり、防衛庁でも検討を進めている。

    国際平和協力業務の自衛隊法における任務の取扱い(いわゆる本来任務化)

    国連平和維持活動参加に関する組織の在り方

    上記イに関し、自衛隊とは別の組織を設置すべきとの議論(いわゆるPKO別組織論)があるが、これについては、軍事組織に属する者の派遣が求められていることなどから、防衛庁としては、別の組織を設置する必要はないと考えている。

(5) ゴラン高原での活動(第9図参照)

    我が国の国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)への参加は、停戦に合意した主権国家の間に設定された兵力引き離し地域に展開している国連平和維持活動への初の参画である。また、中東和平のための国際的努力に対する、我が国の人的な協力としての意義を有するものである。
    本年2月より、カナダの輸送部隊と交代した第1次ゴラン高原派遣輸送隊43名と司令部要員2名が、ゴラン高原において国際平和協力業務に従事している。

国際緊急援助活動

    陸・海・空各自衛隊は、海外、特に開発途上地域において大規模な災害が発生した場合に、被災国政府や国連など国際機関からの要請に即応し得るよう、常日頃から必要な態勢を保持している。

安全保障対話・防衛交流

    各国が保有する軍備及び国防政策の透明性を高め、防衛当局間の対話・交流などを通じて信頼関係を深めることにより、無用な軍備増強や不測の事態の発生とその拡大を抑えていくことが重要である。

(1) 近隣諸国との安全保障対話・防衛交流

    近年、アジア太平洋地域においても、地域の安全保障に対する関心が高まっており、二国間のみならず、ARFなど多国間においても安全保障面での対話を行う動きが見られる。
    しかしながら、この地域では、各国の置かれた安全保障環境や安全保障観は多様であり、欧州のような多国間の安全保障のメカニズムは存在していない。
    防衛庁としては、本年4月の防衛庁長官の初の訪露など、実務者を含めた各レベルでの交流を活発化している。

(2) その他の防衛交流

    近隣諸国をはじめとして欧州諸国など多くの関係諸国との防衛分野の交流を深め、お互いの軍事力及び国防政策を理解し、信頼関係を深めることは重要である。
    防衛庁としては、防衛首脳の相互訪問などのほか、防衛駐在官を通じての交流、防衛研究所における研究交流、留学生の交換や教育訓練の場などの交流を通じ、諸外国との信頼醸成に積極的に取り組んでいる。

国際連合・国際機関などが行う軍備管理・軍縮分野への協力

    我が国は、軍備管理・軍縮分野において、さまざまな形で努力している。その中で、防衛庁として協力しているものとしては、(1)国連軍備登録制度への協力、(2)軍縮関連条約の作成・強化作業への協力(化学兵器禁止条約、生物兵器禁止条約、包括的核実験禁止条約、特定通常兵器条約)、(3)イラクの大量破壊兵器の廃棄に関する国連の活動への貢献、(4)兵器の不拡散体制への取組のそれぞれに係る活動に対する情報の提供や 専門家の派遣などである。
    また今後、国際機関などが行うこれらの活動をより積極的に推進するため、本年1月には「国際機関等に派遣される防衛庁の職員の処遇等に関する法律」が施行され、一般職と同様の処遇を与えた上で、防衛庁の職員を国際機関などの職員として派遣することが可能となった。


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