〔第4節〕日米安全保障体制の信頼性向上のための施策


政策協議・情報交換など

    日米両国間の安全保障上の政策協議は、通常の外交ルートによるもののほか、日米首脳会談や日米防衛首脳会談を始め、防衛実務担当者や民間有識者などとの交流や意見交換に至るまで各レベルにおいて緊密に行われている。
    あらゆる機会とレベルで意思の疎通を図っていくことは、日米安保体制を有効に機能させる上で肝要であり、日米両国は一昨年来、冷戦終結後の新たな時代における日米安保体制の在り方などについて、日米首脳による「日米安全保障共同宣言」の発出を目標に、精力的に議論を重ねてきた。

運用面における協力

(1) 日米防衛協力のための指針

    1975年(昭和50年)、我が国に対して武力攻撃が発生した場合に、日米両国が協力してとるべき措置について協議することが合意され、78年(同53年)に「日米防衛協力のための指針」が作成された。
    この「指針」は、その後行われるべき研究作業のガイドラインとしての性格を有するもので、これに基づき、両国は、共同作戦計画についての研究を始めとした各種の研究を行ってきている。この「指針」は、前大綱の考え方を踏まえて策定されたものであるため、新防衛大綱が策定された現在、現行の新防衛大綱の内容を踏まえて調整を行うことが必要であり、「日米安全保障共同宣言」においても見直しを開始することとなっている。今後、関係省庁や米側と協議しつつ、検討を行っていく必要がある。

(2) 日米共同訓練

    自衛隊が米軍と共同訓練を行うことは、それぞれの戦術技量の向上を図る上で有益である。さらに、日米共同訓練を通じて、平素から自衛隊と米軍の戦術面などにおける相互理解と意思疎通を促進し、インターオペラビリティ(相互運用性)を向上させておくことは、我が国有事における日米共同対処行動を円滑に行うために不可欠である。また、このような努力は、日米安保体制の信頼性と抑止効果の維持向上に役立つものである。
    このため、自衛隊は米軍との間で従来から各種の共同訓練を実施しており、今後とも積極的に行っていく方針である。

日米物品役務相互提供協定の締結

(1) 協定の必要性及び日米間の検討の経緯

    日米安保条約を締結している我が国として、物品又は役務の相互提供に関する枠組みを定めることは、共同訓練を効果的に実施し、日米安保条約の円滑かつ効果的な運用に寄与するとともに、国連平和維持活動などに際してそれぞれの役割を一層効率的に果たし、国際平和のための努力に積極的に寄与するものである。本協定は、1988年(昭和63年)以来の締結交渉を経て、本年6月に締結された。

(2) 協定の概要

    本協定は、自衛隊と米軍との間で、いずれか一方が物品又は役務の提供を要請した場合には、他方はその物品又は役務を提供できることを基本原則としており、共同訓練、国連平和維持活動及び人道的な国際救援活動において適用される。
    提供の対象となる物品又は役務は、食料、水、宿泊、輸送(空輸を含む。)、燃料・油脂・潤滑油、被服、通信、衛生業務、基地支援、保管、施設の利用、訓練業務、部品・構成品、修理・整備及び空港・港湾業務の各区分に係るものである。

装備・技術面での相互交流

    日米両国は、日米安保条約において、それぞれの防衛能力の維持、発展のために相互協 力することとしている。また、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定」は、両国間の防衛分野における相互協力のための枠組みを定めている。我が国としても、こうした相互協力の原則を踏まえ、我が国の技術基盤・生産基盤の維持に留意しつつ、米国との装備・技術面に係る協力を積極的に推進する必要があることは言うまでもない。
    本年度調達を開始する支援戦闘機(F−2)は、日米間の装備品の共同研究開発の初めてのケースである。このような日米間の共同研究開発は、両国の優れた技術を結集して装備品を開発するだけでなく、日米間の防衛協力を推進させることができるという観点からも重要なものである。

在日米軍の駐留を円滑にするための施策

    在日米軍の駐留は、日米安保の核心であり、我が国及びこの地域に対する米国の関与についての意思表示でもある。我が国としても、在日米軍の駐留を円滑にするための諸施策をできる限り積極的に実施していく必要がある。

(1) 在日米軍駐留関連経費の負担(新特別協定を中心として)

    我が国は地位協定に基づき、日米両国で合意するところに従い、在日米軍が使用する施設・区域を米国に負担をかけないで提供する義務を負っている。また、在日米軍従業員の労働力は、地位協定により我が国の援助を得て充足されることとなっている。
    我が国は、1970年(昭和45年)代から、在日米軍の駐留に関して米国が負担する経費が圧迫を受けていることを勘案し、在日米軍の駐留を円滑かつ安定的にするための施策を可能な限り推し進めてきた。昨年9月、96年度(同8年度)から5年間を対象期間とする新特別協定が署名され、11月に国会で承認された。本協定においては、在日米軍従業員の基本給などや、光熱水料などについて既存の仕組みを維持しつつ、運用の柔軟性を図ったことに加え、今回新たに日本側の要請による米軍の訓練の移転に伴う追加的経費(訓練移転費)を負担することとした。

(2) 在日米軍施設・区域の整理・統合・縮小など

    在日米軍の施設・区域は、在日米軍の活動の拠点となるものであり、その円滑かつ安定的な使用は、日米安保体制を維持し、信頼性を高めるために必要不可欠な要素となっている。また、在日米軍の駐留の円滑化のためには、周辺地域社会との調和を図りつつ、米軍施設・区域の安定的使用が確保されることが不可欠である。このため、騒音の軽減や安全問題の改善に努力するとともに、日米安保条約の目的達成との調和を図りつつ、在日米軍施設・区域の整理・統合・縮小を進めることが重要である。

(3) 在日米軍施設・区域の安定的使用のための使用権原の取得

    政府は、在日米軍の施設・区域の安定的な使用を確保するため、当該施設・区域の土地の所有者との合意の下、賃貸借契約を結んでいるところである。しかし、このような契約合意が得られない場合には、駐留軍用地特措法に基づき使用権原を取得することとしている。


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