〔第2節〕大規模災害など各種の事態への対応


各種災害への対応

    自衛隊は、先の阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件などにおける災害派遣の教訓を踏まえ、地方公共団体などとの緊密な協力の下、災害派遣を更に円滑に行うための態勢の充実に努めている。

(1) 自衛隊の行う災害派遣などの仕組み

    自衛隊法第83条に基づき、自衛隊の災害派遣は、原則として、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため、都道府県知事、海上保安庁長官、管区海上保安本部長又は空港事務所長の要請に基づき、実施されることとなっている。これは、都道府県知事などが区域内の災害の状況を全般的に把握した上で、自衛隊の派遣の要否、活動内容などを判断するのが最適であるとの考えによる。
    ただし、防衛庁長官又はその指定する者は、その事態に照らし特に緊急を要し、都道府県知事などの要請を待ついとまがないと認められるときには、要請を待たずに派遣できることが例外的に規定されている(いわゆる自主派遣)。
    また、部隊などの長は、防衛庁の施設又はこれらの近傍に火災などが発生した場合に、部隊などを派遣することができる。
    地震に関しては、発生前でも、「大規模地震対策特別措置法」に基づく警戒宣言が発せられたときには、地震災害警戒本部長(内閣総理大臣)の要請に基づき、地震による災害の発生の防止又は被害の軽減を図るため、地震防災派遣が行われる。自衛隊では、東海地域での大規模地震に備えた「東海地震対処計画」、南関東地域に大規模な震災が発生した場合に備えた「南関東地域震災災害派遣計画」を準備している。

(2) 阪神・淡路大震災などの教訓を踏まえた災害派遣態勢の充実

    阪神・淡路大震災などの教訓を踏まえ、政府全体の取組として、「防災基本計画」の大幅な修正や「災害対策基本法」の改正などが行われた。防衛庁としても、「災害派遣検討会議」を発足させ、各種の検討を行うとともに、自衛隊法の改正や「防衛庁防災業務計画」の修正などを行った。自衛隊に係る具体的措置としては次のとおりである。

    自衛隊が自主派遣を行う際に、部隊長などが迅速かつ適確に判断できるよう、「防衛庁防災業務計画」を修正し、自主派遣を行う場合の基準を明記した。

    「防災基本計画」の修正により、情報連絡体制の充実や共同の防災訓練の実施など、常日頃から自衛隊と地方公共団体などとの連携が、より強化されることとなった。

    人命の保護及び救援活動の円滑な実施の観点から、警察官などがその場にいない場合に限り、道路上の放置車両の除去や警戒区域の設定、土地・建物の使用など、災害派遣時の自衛官が行使し得る権限の追加が法律上規定された。

    震度5以上の地震が発生した場合には、航空機などを活用して被害情報を収集し、迅速に内閣総理大臣などに報告する態勢をとることとした。

    輸送用車両や人命救助システムなど災害派遣にも活用し得る各種装備を充実することとなった。

我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態への対応

(1) 我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態

    我が国周辺における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態が発生した場合において、我が国として、直接影響を受ける各種事態に自ら適切に対応することはもちろん、地域の平和と安定を確保するために国連や米国などが活動する場合に、我が国として憲法及び関係法令に従い、どのように協力するかも重要な課題である。

(2) 緊急事態対応策の検討

    本年5月、橋本総理から、我が国に対する危機が発生した場合などにおいて、我が国としてとるべき種々の対応について、起こり得る諸々のケースを想定し、必要な対応策をあらかじめ具体的に十分検討、研究するように指示があり、政府としての作業を開始した。


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