〔第4節〕新防衛大綱における基本的考え方


保有すべき防衛力についての基本的考え方

(1)基盤的防衛力構想の基本的踏襲

    新防衛大綱においては、前大綱が取り入れていた「基盤的防衛力構想」を基本的に踏襲することとしている。これは、新防衛大綱が、国際関係の安定化努力が継続し、日米安保体制が重要な役割を果たし続けるという点において、前大綱と基本的に同様の情勢認識を有していることによる。

(2)保有すべき防衛力の具体的内容の見直し

    今後の我が国の防衛力については、現行の防衛力の規模及び機能の見直しを行い、その合理化・効率化・コンパクト化を一層進めるとともに、必要な機能の充実と防衛力の質的な向上を図ることにより、多様な事態に対して有効に対応し得る防衛力を整備し、同時に事態の推移にも円滑に対応できるよう適切な弾力性を確保し得るものとすることが適当である。

日米安全保障体制の重要性の再確認

    新防衛大綱では、冷戦終結後の国際社会における日米安保体制の役割が再認識されているという認識の下、これまでの日米防衛協力の成果を再確認しつつ、また、日米両国が行ってきた対話の成果も踏まえ、日米安保体制の意義及びその信頼性の向上を図り、これを有効に機能させていくための具体的な取組の重要性について整理して述べている。

防衛力の今後の役割

    防衛力の中心的な役割が「我が国の防衛」であることは言うまでもないが、近年における環境の変化、特に自衛隊の活動に対する期待の高まりなどを考慮すると、防衛力はより幅広い役割を果たすことを求められていると考えられる。

(1) 我が国の防衛

    我が国の防衛に関しては、まず、侵略の未然防止に努めることが重要である。また、核兵器の脅威に対しては、核兵器のない世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮の国際的努力の中で、我が国として積極的な役割を果たしつつ、米国の核抑止力に依存する必要がある。間接侵略などが発生した場合には、自衛隊は事態に即応して行動し、早期にこれを収拾しなければならない。また、直接侵略事態が発生した場合には、速やかにこれを排除しなければならない。

(2) 大規模災害など各種の事態への対応

    阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件のような人命又は財産の保護を必要とする大規模災害など各種の事態に際し、自衛隊が派遣を要請された場合などには、地方公共団体などとの緊密な協力の下、状況に応じた適切な救援活動などを速やかに実施する必要がある。また、我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合には、自衛隊としても、憲法及び関係法令に従い、適切に対応する必要がある。

(3) より安定した安全保障環境の構築への貢献

    国際平和協力業務の実施を通じ、国際平和のための努力に寄与するとともに、国際緊急援助活動の実施により国際協力の推進に寄与する。また、防衛首脳間の対話を含めたさまざまなレベルでの防衛当局間の対話・交流などを引き続き推進し、我が国周辺諸国を含む関係諸国との間の信頼関係の増進を図る。さらに、国連・国際機関などが行う軍備管理・軍縮分野における諸活動に協力していく必要がある。


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