第3節冷戦後の安全保障環境における日米安全保障体制

冷戦後の安全保障環境においても、第2章において指摘した日米安全保障体制の意義は、依然として重要な意味を持っていることに変わりはない。

さらに、国際社会における新たな安全保障環境の下、国連などを中心とする国際秩序構築の努力やアジア・太平洋地域における安定化の努力が進められており、新たにこうした状況を踏まえつつ、日米の同盟関係の重要な役割が認識されるようになってきている。

  1. 安定的な国際社会に不可欠な枠組み

    国際社会は、冷戦構造における東西対立を中心とする環境から、地域紛争の危険、大量破壊兵器の拡散などへの対処を共通の課題とする環境へ変化した。こうした環境の中で、国連などを中心とする国際秩序構築の努力が続けられている。わが国も、国際社会の一員として、国連平和維持活動への参加などに積極的に取り組み、国連などを中心とする国際秩序構築の努力に貢献してきている。

    国連などを中心とする国際秩序構築を有効に進めるうえでも、日米の同盟関係に基づく日米両国の協力関係は、国際社会を安定的なものとするための重要な枠組みとなってきている。

  2. アジア・太平洋地域の安定にとっても重要な絆

    アジア・太平洋地域では、欧州のような多国間の集団安全保障体制は存在せず、この地域の平和と安全を図る上で、米国のコミットメントとプレゼンスの維持が依然重要な役割を果たしている。

    このような背景の下、日米安全保障体制は、アジア・太平洋地域の安定要因としての米国の関与と米軍のプレゼンスを確保するための重要な絆として、アジア・太平洋地域の安全保障にとって重要な役割を果たしている。

    他方、この地域では、近年、多国間での政治・安全保障の対話の動きがみられるようになってきていることも事実であり、このような中にあって、わが国としても、日米安全保障体制に基づく日米の緊密な関係を基礎としつつアジア・太平洋地域の諸国と、安全保障対話や防衛交流を通じて、相互理解をさらに深め信頼を醸成していくよう努力しているところである。

  3. 日米安全保障体制の維持・強化のための努力

    日米安全保障体制を維持・発展させるためには、両国が常日頃から、その信頼性を維持、向上させる努力を払わなければならない。このため、わが国は、米国の関係者とさまざまな機会に協議を行い意思疎通を図るとともに、各種の日米防衛協力を行ってきている。

    わが国としては、引き続き各般の分野における努力を含め、日米防衛協力関係の一層の充実を図っていく考えである。当面検討されている個別の課題の例としては、

    1. 在日米軍駐留経費負担の在り方についての話し合い

    2. 沖縄に所在する在日米軍施設・区域の整理統合についての作業

    3. 物品役務融通協定(ACSA)の仕組みの導入に係る法的側面の検討

    4. 弾道ミサイル防衛に関する研究

    があり、これに加え、装備・技術面での協力や日米共同訓練などを積極的に推進していくことは、日米安全保障体制の信頼性の維持、向上を図っていく上で極めて重要なものとなっている。


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