第2節今後の防衛力について

  1. 今後の防衛力の在り方の検討の必要性

    わが国の防衛力は、76年に策定された「防衛計画の大綱」の下、独立国として必要最小限の基盤的な防衛力を保持するとの考え方に基づいて整備されてきたものであり、米国や西欧諸国の防衛力と一律に論ずることができない。また、わが国は既に93年度に、現中期防策定後の内外諸情勢の変化を踏まえ、より緩やかな形で防衛力整備を進めることとして中期防の修正を行ってきている。

    しかしながら、東西対立という枠組みがなくなり、安定化のための新たな秩序を模索している国際社会にあって、わが国も、今後のわが国の防衛力の在り方についてさらに積極的に検討を進める必要がある。

    このわが国の防衛力の在り方の検討は、先に述べた国際情勢の変化、将来の人的資源の制約の増大を始めとする国内的諸条件、技術水準の動向など多様な要素を考慮しつつ、自衛隊の組織・編成・配置を含め、幅広くわが国の防衛全般を対象として行うものである。

  2. 防衛問題懇談会

    現在の「大綱」に代わる新たな考え方の骨格について有識者から意見を聴取することを目的として、総理(当時細川総理)の下に「防衛問題懇談会」が開催された。同懇談会は、昨年8月、報告「日本の安全保障と防衛力の在り方−21世紀へ向けての展望」を村山総理に提出し、終了した。

    報告は、わが国がこれまでのどちらかと言えば受動的な安全保障上の役割から脱すべきであるとの観点から、「能動的・建設的な安全保障政策」を追及すべきことを提唱している。そのために、

    1. 多角的安全保障協力の促進(自衛隊の国連平和維持活動の強化、安全保障対話の促進)

    2. 日米安全保障協力関係の充実

    3. 自衛能力の維持と質的改善

    の3つを柱に立てている。

    そして、報告は、特に国際情勢などの変化に対応した新しい防衛力についての基本的な考え方として、基盤的防衛力の概念を生かしつつ、新たな戦略環境に適応させるのに必要な修正を加えることが適切であるとしている。

  3. 防衛庁における防衛力の在り方の検討の状況

    防衛庁においても、93年6月には、広く国民各層の意見に耳を傾けることが重要との観点から、防衛局長の下に「新時代の防衛を語る会」を発足させ、幅広い観点から議論がなされたところである。

    昨年2月には、防衛庁としても長官の下に庁内体制を整えて検討を進め、もって政府としての検討に資するため、長官を議長とする「防衛力の在り方検討会議」を発足させた。現在は、このような場において、前記報告の内容も一つの参考にしながら、信頼性の高い効率的な防衛力の維持と質的改善を目指して、自衛隊の組織・編成を含め具体的に検討作業を行っている。

  4. 安全保障会議の開催

    本年6月には、今後の防衛力の在り方について、すなわち、「防衛計画の大綱」の見直しなどについての1回目の安全保障会議が開催され、政府としての検討が開始された。


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