第6節災害派遣における自衛隊の役割と対応

わが国は、地震、噴火、台風、豪雨、豪雪といった自然災害が多く、また離島などが多い地理的環境にあること、災害の態様が複雑かつ多様化していることなどから、自衛隊による災害救援活動は一層重要なものになっている。

自衛隊は、わが国の防衛とともに、必要に応じ、被害救援活動などを実施することを任務としており、災害時に国民の生命と財産の保護に貢献し、国民の信頼に応えるため、災害に備えて訓練を行うなど災害対処の向上に努めている。

  1. 災害派遣に係る自衛隊の行動

    自衛隊法第83条に基づき、都道府県知事、海上保安庁長官、管区海上保安本部長又は空港事務所長は、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要と認める場合には、部隊などの派遣を防衛庁長官又はその指定する者(方面総監、師団長、駐屯地司令)に要請することができる。その要請を受けた防衛庁長官などは、事態がやむを得ないと認める場合には、部隊などを救援のため派遣することができる。ただし、その事態に照らし特に緊急を要し、前述の都道府県知事などの要請を待ついとまがないと認められるときには、要請を待たずに部隊などを派遣することができ、また、庁舎、営舎その他の防衛庁の施設又はこれらの近傍に火災その他の災害が発生した場合に部隊などの長は、部隊などを派遣することができる。

  2. 地震防災派遣など

    地震に関しては、発生前でも、「大規模地震対策特別措置法」に基づく警戒宣言が発せられたときには、地震災害警戒本部長(内閣総理大臣)の要請に基づき、地震による災害の発生の防止又は軽減を図るため、地震防災派遣が行われることになっている。

    自衛隊では、地震防災対策強化地域に指定されている東海地域での大規模地震に備えた「東海地震対処計画」、南関東地域(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)に大規模な震災が発生した場合に備えた「南関東地域震災災害派遣計画」を準備している。

  3. 阪神・淡路大震災に係る災害派遣

    自衛隊は、航空偵察、行方不明者の捜索・救助、遣体の収容、患者輸送、救護所の設置・巡回診療などの医療支援、救援物資などの輸送、給水・給食支援、天幕や入浴施設の設置・運営及び防疫支援などの活動を行った。

    約100日間にわたり実施したこの災害派遣において自衛隊が派遣した規模は延べにして、人員約220万人、車両約340,000両、航空機約13,000機、艦艇約680隻であった。

  4. 東京都内地下鉄における毒性ガス事案に係る災害派遣

    自衛隊は、化学防護隊などを派遣し、毒性ガスの検知及び除染などを行うとともに、医官などを派遣し、医療活動を行った。

  5. その他の災害派遣

    地震以外の天災地変による災害への主な災害派遣としては、91年から始まった雲仙普賢岳噴火に伴う大規模火砕流発生に対する派遣、94年の渇水に係る災害派遣などがある。


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