激動する国際社会の中にあって、わが国は戦後半世紀近くにわたり平和と繁栄を享受してきたが、これは、わが国自身の防衛努力とあいまって、日米安全保障体制が抑止の体制として一貫して有効に機能してきたことが大きな要素であることは否定できない。
今後とも、わが国はこの日米安全保障体制の維持を国政の基本としていくべきである。
(1)わが国の安全に対する直接的貢献
わが国への武力攻撃があった場合、日米両国は、日米安全保障条約により共同対処を行うこととなっている。この米国の日本防衛義務により、わが国への武力攻撃は、自衛隊のみならず米国の有する強大な軍事力とも直接対決することとなり、相手国は侵略を躊躇せざるを得ず、結果として侵略は未然に防止される。
(2)極東の平和と安全の維持への貢献
日米安全保障条約に基づく米軍のわが国への駐留は、わが国の安全のみならず、極東における国際の平和と安全の維持にも貢献している。
(3)日米関係の中核
日米安全保障体制は、日米間において、単に防衛面のみならず、政治、経済、社会などの両国の幅広い分野における友好協力関係の基礎となっている。
(4)幅広い外交関係の基盤
わが国として近隣諸国との対話を促進し、アジア・太平洋地域の安定を図っていくためには、日米安全保障体制に裏付けられた強固な日米の同盟関係は重要な役割を果たしていくものと考えられる。
95年1月には日米首脳会談、94年9月、同年10月及び95年5月には日米防衛首脳会談が行われ、幅広く意見交換されている。
在日米軍の駐留は、日米安全保障体制の核心であり、同体制の有する機能を真に有効に発揮させるためには、わが国としても、在日米軍の駐留を円滑にするための諸施策をできる限り積極的に実施していく必要がある。
そのため、米軍に提供する施設の整備、在日米軍従業員の基本給や諸手当などの負担、施設・区域などの整備のための措置などを行っている。
日米両国は、日米安全保障条約において、それぞれの防衛能力の維持、発展のために相互協力するとしている。また、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定」は、両国間の防衛分野における相互協力のための枠組みを定めている。これら、条約の相互協力の原則を踏まえ、わが国の技術基盤・生産基盤を維持することの重要性を認識しつつ、わが国としても米国との装備・技術面に係る協力を積極的に推進する必要がある。
95年1月に試作第1号機がロールアウトした次期支援戦闘機(FS−X)は、日米間の装備品の共同研究開発の初めてのケースである。このような日米間の共同研究開発は、両国の優れた技術を結集して効果的に装備品を開発するだけでなく、日米間の防衛協力を進展させることができるという観点からも重要なものである。
自衛隊が米軍と共同訓練を行うことは、それぞれの戦術技量の向上を図る上で有益である。さらに、自衛隊と米軍の戦術面などにおける相互理解と意思疎通を促進し、インターオペラビリティー(相互運用性)を向上させておくことはわが国有事における日米共同対処行動を円滑に行うために不可欠である。加えて、このような努力は、日米安全保障体制の信頼性と抑止効果の維持・向上に役立つものである。
このため、自衛隊は米軍との間で従来から各種の共同訓練を実施しており、今後とも積極的に行っていく方針である。
米国の対日コミットメントを確保し、日米安全保障条約が有効に機能するには、平時から緊密な協力関係が確保されていなければならない。このため緊急時における自衛隊と米軍との問の、整合のとれた共同対処行動を確保するためにとるべき措置に関する指針を含め、日米間の協力の在り方に関し研究・協議が行われ、その結果、78年11月「日米防衛協力のための指針」が作成された。
この「指針」は、じ後行われるべき研究作業のガイドラインとしての性格を有するものとして、侵略を未然に防止するための態勢、日本に対する武力攻撃に際しての作戦構想や指揮・調整、情報、後方支援活動などの対処行動などについての基本的な事項の在り方を示すべく作成されたものである。これに基づき、共同作戦計画についての研究を始めとした各種の研究を行っている。