第3節防衛計画の大綱と防衛力整備
  1. 防衛計画の大綱

    「防衛計画の大綱」(「大綱」)は、わが国が平時から保有すべき防衛力の水準を明らかにし、わが国の防衛力整備のあり方などについての指針を示したものである。

    「大綱」は、国際社会において、相互関係の改善のための対話が継続し、また、紛争の未然防止や国際関係の安定化のための努力が続いているという国際情勢などを前提とし、防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた体制を保有することを主眼とするなど、わが国が平時から保有すべき防衛力の水準を定めている。わが国がそのような態勢を堅持していることが、日米安全保障体制とあいまって、わが国周辺の国際政治の安定の維持に貢献することともなっているのである。すなわち、これは、わが国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、みずからが力の空白となってこの地域における不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を保持するという考え方(基盤的防衛力構想)に立っているものである。

  2. 中期防衛力整備計画

    86年度から90年度までを対象とする「中期防衛力整備計画」(前中期防)が終了するのに際し、流動的な国際情勢の下で、「大綱」が引き続き防衛力整備の指針として妥当であるかという点について検討がなされた。その結果、政府として、国際情勢は総じて好ましい方向に変化しつつあると認識するとともに、「大綱」の基本的な考え方に従って効率的で節度ある防衛力の整備に努めることが適当であると判断し、90年12月、91年度以降の防衛力整備の指針となる「平成3年度以降の防衛計画の基本的考え方について」を決定した。また、これに基づき、「中期防衛力整備計回(平成3年度〜平成7年度)について」を決定した。

    この中期防衛力整備計画は、情勢の変化を織り込んだものであるが、その策定後においても、わが国の防衛力整備をめぐる内外の諸情勢には大きな変化が生じた。

    このような諸情勢の変化を可能な限り早期に防衛力整備に反映させるため、同計画において3年後に行うこととされている計画の修正を1年前倒しして行うこととし、政府は、92年12月「中期防衛力整備計画(平成3年度〜平成7年度)の修正について」を決定した。

  3. 95年度の防衛予算

    95年度の防衛関係費は、総額4兆7,236億円である。これは、一段と深刻さを増している財政事情などを踏まえ、各種経費の削減、圧縮を図ったものであり、極めて抑制されたものとなっている。(第3図参照)

    この厳しい状況の中で、防衛庁としては、修正された中期防の最終年度として、防衛力全体として均衡がとれた体制の維持、整備を図るための必要最小限の業務が推進できるよう配慮しているところである。

    95年度の予算における正面装備については、老朽装備の更新などを基本としつつ、後方分野については、隊舎など生活関連施設の充実、基地対策の推進などの諸施策を重点的に実施し得るよう配意した。

  4. 中期防衛力整備計画の達成状況

    91年度から95年度までの防衛力整備により、修正された中期防をおおむね達成できたものと考えられる。(第4図参照)

    これにより、「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準を全体として適切に維持しつつ、効率的で節度ある防衛力の整備が図られたものと考えられる。

  5. 自衛隊の現在の体制

    わが国は節度ある防衛力を整備してきた。その結果としての自衛隊の現在の体制は、第5図のとおりである。(陸上自衛隊の体制海上自衛隊の体制航空自衛隊の体制


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