第2章わが国の防衛政策と自衛隊の現状


第1節わが国の防衛政策の基本的考え方

  1. 防衛努力の必要性

    1. わが国の今日の繁栄の背景には、自由主義国家の一員として、戦後半世紀近くにわたり、外国からの侵略を受けることなく、国の安全が保たれてきたことがある。

    2. 今日の国際社会においては、国連の活動を始めとして、より安定した国際秩序の確立を目指してさまざまな努力が続けられている。しかしながら、こうした動きは始まったばかりであり、侵略のおそれの全くない真に平和な安全保障環境の確立には至っていないのが現実である。このため、各国はそれぞれの環境に即し、自国の安全確保に努めている。

    3. わが国としても国際社会の現伏に照らし、国の安全を確保するための努力を怠ってはならない。

    4. わが国の安全を確保するための手段としては、国際政治の安定を確保するための外交努力、内政の安定による安全保障基盤の確立、みずからの防衛努力及び日米安全保障体制の堅持がある。

    5. 外交などの分野での努力は極めて重要であるが、こうした努力のみでは、実力をもってする侵略を必ずしも未然に防止することはできない。また、万一侵略を受けた場合は、これを排除することもできない。

    6. 軍事力は、他のいかなる手段や力によっても代替し得ないものであり、国の安全保障を最終的に担保するものである。

    7. 軍事力は、その時々の情勢の変化に応じ一朝一夕に整備できるものではなく、長期的視点に立って、計画的かつ継続的に整備する必要がある。

    8. わが国としては、みずから適切な規模の防衛力の整備を進めるとともに、米国との安全保障体制を堅持し、その信頼性を高めていくことで、わが国の安全を確保していくとの方針に基づき、継続的な努力を行ってきている。このような努力は、わが国の安全を確保するのみならず、アジアひいては世界の平和と安全に貢献することとなる。

  2. 憲法と自衛権

    憲法第9条の規定が主権国家としてのわが国固有の自衛権を否定するものではないことは異論なく認められている。このため、政府は、自衛のための必要最小限度の実力を保持することは、憲法上禁止されているものではないと解しており、このような考えの下に、専守防衛をわが国防衛の基本的な方針として、実力組織としての自衛隊を保持し、その整備を推進し、運用を図っており、これらは憲法上何ら問題がない。

  3. 防衛政策の基本

    わが国の防衛政策の基本となっている「国防の基本方針」を受けて、これまで、わが国は、平和憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従い、日米安全保障体制を堅持するとともに、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、節度ある防衛力を自主的に整備してきている。


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