太平洋島嶼国は、南太平洋に位置する14の島国の総称で、広い排他的経済水域を有していることから豊富な水産資源の供給地であり、エネルギー資源の輸送ルートにあたるなど、わが国にとって重要な地域です。
一方、他地域から離れていることや国土が狭く分散していることから、様々な制約や脆弱性を抱えており、また、3か国を除いて自国の軍隊を有していません。こうしたなか、気候変動を安全保障上の唯一かつ最大の脅威と位置づけており、海面上昇による国土消失や自然災害の規模拡大を深刻視しています。
これらの国は従来、米国・オーストラリア・ニュージーランドと深い関係を有していますが、近年、中国のアプローチ活発化により、大国間の地政学的競争が顕在化してきています。例えば、中国がソロモン諸島との間で、中国の警察・軍の派遣や艦艇の寄港・補給が可能となる内容を含むとされる安全保障協力協定を締結した一方で、米国はパプアニューギニアとの間で、同国の港湾や空港に米軍がアクセス可能となる内容を含むとされる防衛協力協定に署名しました。さらに、中国が大規模インフラ整備や病院船派遣などを通して影響力拡大を模索する中、米国は、既存の軍事プレゼンスの維持・拡大を試みるなど、この地域への関与をめぐる米中間の競争が注目されています。