わが国は、米国との間で、1992年以降、25件の共同研究と1件の共同開発を実施している。現在は、5件の共同研究(①部隊運用におけるジェット燃料及び騒音への曝露(ばくろ)の比較、②高耐熱性ケース技術、③次世代水陸両用技術、④日米間のネットワーク間インターフェース、⑤モジュール型ハイブリッド電気駆動車両システムにかかる共同研究)を実施している。また、2022年9月の日米防衛相会談において、極超音速技術に対抗するための技術について、共同分析の進捗を踏まえ、要素技術・構成品レベルでの日米共同研究の検討を開始することで合意し、防衛省及び防衛装備庁と米ミサイル防衛庁を中心に検討を加速させている。
2022年12月には、次期戦闘機をはじめとした装備を補完できる、無人航空機などの自律型システムに関する具体的な協力を2023年中に開始することで一致している。
このほか、2014年7月以降、ペトリオットPAC-2の部品などの米国への移転について、国家安全保障会議において、海外移転を認め得る案件に該当することを確認している。
参照III部1章4節2項(ミサイル攻撃などへの対応)、資料30(日米共同研究・開発プロジェクト)
わが国は、2011年12月、F-35A戦闘機をF-4戦闘機の後継機とし、一部の完成機輸入を除き国内企業が製造に参画することなどを決定した2。これを踏まえ、わが国は、2013年度以降のF-35A戦闘機の取得に際して、国内企業の製造参画を図り、これまで、機体及びエンジンの最終組立・検査(FACO:Final Assembly and Check Out)や関連部品の製造参画の取組を行ってきた。
2019年度以降の取得に際しては、厳しい財政状況を踏まえ、完成機輸入を原則としつつ、より安価な手段がある場合には見直すこととされた。しかし、その後の製造企業による経費低減の取組などにより、国内企業が最終組立・検査を実施する方が、完成機輸入に比べてより安価となることが確認されたため、2019年度から2027年度までの取得については、国内企業が最終組立・検査を実施した機体を取得することとしている3。
また、F-35戦闘機が全世界的に運用されることから、米国政府は、北米・欧州・アジア太平洋地域に機体・エンジンを中心とした整備拠点(リージョナル・デポ)を設置することとした。
2014年12月に、米国政府によって選定されたアジア太平洋地域におけるわが国のF-35戦闘機の機体の整備拠点は、2020年7月から愛知県にある三菱重工業小牧南工場において運用を開始した。また、エンジンの整備拠点については、2018年初期までにオーストラリアに設置し、その3~5年後、追加所要に対応するためわが国にも設置すること4を決定した旨、2014年12月に米国政府が公表したことから、現在運用開始に向けて準備中である。
F-35戦闘機の製造に国内企業が継続して参画することや、機体及びエンジンなどの整備拠点を国内に設置し、アジア太平洋地域での維持整備に貢献することは、国内の防衛生産・技術基盤の維持・育成・高度化に資するものであるとともに、わが国のF-35A戦闘機の運用支援体制の確保、日米同盟の強化、インド太平洋地域における装備協力の深化といった観点から、有意義である。
米海軍は、普天間飛行場に配備されている米海兵隊オスプレイの定期機体整備のため、2015年10月、整備企業として富士重工業株式会社5を選定し、2017年2月から、陸自木更津駐屯地において定期機体整備が開始され、2023年3月末時点で5機の整備が完了し、4機を整備中である。
防衛省としては、①陸自オスプレイ(V-22)6の円滑な導入、②日米安保体制の円滑かつ効果的な運用、③整備の効率化の観点から、木更津駐屯地の格納庫を整備企業に使用させ、米海兵隊オスプレイの整備とともに、将来のV-22の整備を同駐屯地で実施することにより、日米オスプレイの共通の整備基盤を確立していくこととしている。木更津駐屯地での共通の整備基盤の確立は、日米ガイドラインに掲げる「共通装備品の修理及び整備の基盤の強化」の実現と沖縄の負担軽減に資するものとして、極めて有意義である。
2 2018年12月、F-35A戦闘機の取得数については、42機から147機とし、新たな取得機のうち42機については、短距離離陸・垂直着陸機能を有する戦闘機の整備に替え得るものとすることが決定された。
3 2019年12月に2019年度及び2020年度の、2020年12月に2021年度の、2021年12月に2022年度の、2022年12月に2023年度から2027年度までのF-35A戦闘機の取得について、それぞれ、より安価な手段であることが確認された国内企業が参画した製造とすることが決定された。
4 わが国におけるエンジンのリージョナル・デポは、株式会社IHI(東京都:瑞穂工場)を予定
5 2017年4月1日に、株式会社SUBARUに社名を変更
6 陸自では、CH-47JA輸送ヘリコプターの輸送能力を巡航速度や航続距離などの観点から補完・強化できるティルト・ローター機(オスプレイ(V-22))を17機導入することとし、佐賀空港における施設整備が完了するまでの一時的な処置として、木更津駐屯地に暫定的に配備することとしている。