わが国は、自国の安全保障、平和貢献・国際協力の推進及び技術基盤・産業基盤の維持・強化に資するよう、防衛装備移転三原則に基づき、諸外国との防衛装備・技術協力を推進している。
前安保戦略に基づき、新たな安全保障環境に適合する明確な原則として、2014年4月に「防衛装備移転三原則1」及びその運用指針が策定された。防衛省としては、この三原則のもと、これまで以上に平和貢献・国際協力に寄与するとともに、同盟国たる米国及びそれ以外の諸国との防衛協力を積極的に進めることを通じ、地域の平和と安定を維持し、わが国を守り抜くための必要な諸施策を積極的に推進していくこととしている。
防衛装備品の海外への移転は、三文書においても、その推進について記述しており、特にインド太平洋地域における平和と安定のために、力による一方的な現状変更を抑止して、わが国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略や武力の行使又は武力による威嚇を受けている国への支援などのための重要な政策的手段となる。
こうした観点から、安全保障上意義が高い防衛装備移転や国際共同開発を幅広い分野で円滑に行うため、防衛装備移転三原則や運用指針をはじめとする制度の見直しについて検討する。その際、三つの原則そのものは維持しつつ、防衛装備移転の必要性、要件、関連手続の透明性の確保などについて十分に検討する。また、防衛装備移転を円滑に進めるため、基金を創設し、安全保障上の観点から適切なものとするために、装備移転にかかる仕様及び性能の調整を行うために必要な資金の交付を行うことなどにより、官民一体となって防衛装備移転を進めることとしている。
こうした防衛装備移転については、2014年の防衛装備移転三原則の策定後、完成品の装備移転の実現に加え、民生品の製造業における高い技術水準や産業競争力などを背景として、米国のみならず、英国やオーストラリアなどの先進国を中心に、国際共同研究などを進めてきており、また、現在、艦艇、航空機、レーダーなどについて、諸外国から装備移転の引き合いを受けているところである。
防衛装備の海外への移転を禁止する場合を、①わが国が締結した条約その他の国際約束に基づく義務に違反する場合、②国連安保理の決議に基づく義務に違反する場合、又は③紛争当事国への移転となる場合とに明確化した。
移転を認め得る場合を、①平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する場合、又は②わが国の安全保障に資する場合などに限定し、透明性を確保しつつ、仕向先及び最終需要者の適切性や安全保障上の懸念の程度を厳格に審査することとした。また、重要な案件については国家安全保障会議で審議し、あわせて情報の公開を図ることとした。
防衛装備の海外移転に際しては、適正管理が確保される場合に限定し、原則として目的外使用及び第三国移転についてわが国の事前同意を相手国政府に義務付けることとした。ただし、平和貢献・国際協力の積極的な推進のため適切と判断される場合、部品などを融通し合う国際的なシステムに参加する場合、部品などをライセンス元に納入する場合などにおいては、仕向先の管理体制の確認をもって適正な管理を確保することも可能とした。