防衛戦略は、海洋国家であるわが国にとって、海洋の秩序を強化し、航行・飛行の自由や安全を確保することは、わが国の平和と安全にとって極めて重要であるとしている。
このため、防衛省・自衛隊は、インド太平洋地域の沿岸国と共に、FOIPの実現のため、海洋安全保障に関する協力を推進している。
また、シーレーンの安定的利用を確保するために、関係機関との協力・連携のもと、海賊対処や日本関係船舶の安全確保に必要な取組を実施している。
安保戦略において、わが国は海洋国家として、同盟国・同志国などと連携し、航行・飛行の自由や安全の確保、法の支配を含む普遍的価値に基づく国際的な海洋秩序の維持・発展に向けた取組を進めることとしている。具体的には、海洋状況監視、共同訓練・演習、海外における寄港などの推進、海賊対処や情報収集活動の実施を明記している。
さらに、南シナ海などにおける航行及び上空飛行の自由の確保、国際法に基づく紛争の平和的解決の推進、シーレーン沿岸国との関係の強化、北極海航路の利活用など、また、ジブチにおける拠点の活用について取り組むこととしている。
また、2023年4月に閣議決定された第4期海洋基本計画においては、引き続き海洋の安全保障の観点から海洋政策を幅広く捉え、「総合的な海洋の安全保障」として政府一体となった取組を進めることとしており、主にわが国自身の努力による「わが国の領海などにおける国益の確保」や同盟国・同志国などとの連携強化を通じた、「国際的な海洋秩序の維持・発展」のために必要な施策を推進することとしている。
なお、中国とASEANが策定に向け協議を続けている南シナ海行動規範(COC:Code of Conduct in the South China Sea)に対し、わが国としては、COCは、国連海洋法条約をはじめとする国際法に合致すべきであり、南シナ海を利用するステークホルダーの正当な権利や利益を害してはならないとの立場を表明している。
防衛省・自衛隊は、シーレーンの安定的利用を確保するための海賊対処行動、中東地域における日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集活動などを行っている。また、法の支配や航行の自由の重要性について、防衛省・自衛隊としても機会を捉えて国際社会に呼びかけており、私たちの繁栄に不可欠な海においても「法の支配」を徹底することを一貫して訴えている。また、東シナ海及び南シナ海において、力による一方的な現状変更の試みが継続している旨指摘するとともに、南シナ海においても、全ての当事者が、国連海洋法条約をはじめとする国際法に基づく紛争の平和的解決に向け努力する重要性について発信している。