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第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチ

8 国民保護に関する取組

1 基本的考え方

2022年の度重なる北朝鮮の弾道ミサイル発射、特に日本列島越えの弾道ミサイル発射によるJアラートによる情報伝達などにより、昨今、国民保護に対する関心や、防衛省・自衛隊に対する期待が高まっている。国民保護は防衛戦略における防衛力の抜本的強化の柱の一つであり、防衛省・自衛隊としても、積極的に取り組んでいくこととしている。

2005年3月、政府は、国民保護法第32条に基づき、国民の保護に関する基本指針(基本指針)を策定した。この基本指針においては、武力攻撃事態の想定を、①着上陸侵攻、②ゲリラや特殊部隊による攻撃、③弾道ミサイル攻撃、④航空攻撃の4つの類型に整理し、その類型に応じた国民保護措置の実施にあたっての留意事項を定めている。

防衛省・自衛隊としては、武力攻撃事態などにおいては、国民保護措置として、警察、消防、海上保安庁など様々な関係省庁とも連携しつつ、被害状況の確認、人命救助、住民避難の支援などの措置を実施することとしている。

なお、弾道ミサイルなどによる武力攻撃事態から住民の生命及び身体を保護するため必要な機能を備えた避難施設の整備は、被害を防止するための措置であるとともに、弾道ミサイル攻撃などに対する抑止にもつながる観点も踏まえ、政府で検討を行っている。

2 国民保護措置を円滑に行うための防衛省・自衛隊の取組
(1) 国民保護のための体制の強化

国民の命を守りながらわが国への侵攻に対処するにあたっては、国の行政機関、地方公共団体、公共機関、民間事業者が協力・連携して統合的に取り組む必要がある。

政府としては、武力攻撃より十分に先立って、南西地域を含む住民の迅速な避難を実施するため、円滑な避難に関する計画の速やかな策定、官民の輸送手段の確保、空港・港湾などの公共インフラの整備と利用調整、様々な種類の避難施設の確保、国際機関との連携などを行うこととしている。また、こうした取組の実効性を高めるため、住民避難などの各種訓練の実施と検証を行ったうえで、国、地方公共団体、指定公共機関などの連携を推進しつつ、制度面を含む必要な施策の検討を行うこととしている。

また、自衛隊としては、これらの施策への参画や協力に加え、自衛隊が使用する民間船舶・航空機や自衛隊の各種輸送アセットを利用した国民保護措置を計画的に行えるよう調整・協力することとしているほか、国民保護にも対応できる自衛隊の部隊の強化、予備自衛官の活用などの各種施策を推進することとしている。

(2)地方公共団体などとの平素からの連携

防衛省・自衛隊では、陸自方面総監部や自衛隊地方協力本部などに連絡調整を担当する部署を設置し、地方公共団体などと平素から緊密な連携を確保している。

また、国民保護措置に関する施策を総合的に推進するため、都道府県や市町村に国民保護協議会が設置されており、各自衛隊に所属する者や地方防衛局に所属する職員が委員に任命されている。

さらに、地方公共団体は、退職自衛官を危機管理監などとして採用し、防衛省・自衛隊との連携や対処計画・訓練の企画・実施などに活用している。

(3)国民保護訓練

国民保護措置の的確かつ迅速な実施のためには、平素から関係機関と連携態勢を構築しておくことが必須であり、政府全体として武力攻撃事態などを念頭に置いた国民保護訓練を強化することとしている。防衛省・自衛隊は、関係省庁の協力のもと、地方公共団体などの参加も得て訓練を主催しているほか、関係省庁や地方公共団体が実施する国民保護訓練に積極的に参加・協力している。

参照資料20(国民保護にかかる国と地方公共団体との共同訓練への防衛省・自衛隊の参加状況(令和4(2022)年度))