重視する能力の7つの分野において、各自衛隊は以下の役割を担う。
スタンド・オフ防衛能力では、各自衛隊が車両、艦艇、航空機からのスタンド・オフ・ミサイル発射能力について必要十分な数量を整備する。
統合防空ミサイル防衛能力では、海上自衛隊の護衛艦が上層、陸上自衛隊及び航空自衛隊の地対空誘導弾が下層における迎撃を担うことを基本として将来の経空脅威への対応能力を強化する。また、各自衛隊はスタンド・オフ防衛能力などを反撃能力として活用する。
無人アセット防衛能力は、各自衛隊が各々の任務分担に従い、既存の部隊の見直しを進めつつ、航空・海上・水中・陸上の無人アセット防衛能力を大幅に強化する。
領域横断作戦のうち、宇宙領域では、航空自衛隊においてSDA能力をはじめとする各種機能を強化する。サイバー領域では、防衛省・自衛隊としてわが国全体のサイバーセキュリティ強化に貢献するため、自衛隊全体で強化を図り、特に陸上自衛隊が人材育成などの基盤拡充の中核を担っていくこととする。電磁波領域では、各自衛隊において、電子戦装備を取得・増強する。
指揮統制・情報関連機能では、各自衛隊の情報収集能力の強化などを行う。また、スタンド・オフ・ミサイルの運用に必要なISRTを含む情報本部の情報機能を抜本的に強化するとともに、指揮統制機能との連携を強化する。
機動展開能力・国民保護では、陸上自衛隊は中型・小型船舶などを、海上自衛隊は輸送艦などを、航空自衛隊は輸送機などを確保することにより、機動・展開能力を強化する。また、陸上自衛隊は、沖縄における国民保護をも目的として、部隊強化を含む体制強化を図る。
持続性・強靱性では、各自衛隊は平素から弾薬及び可動装備品を必要数確保するとともに、能力発揮の基盤となる防衛施設の抗たん性を強化する。
7つの分野における役割を踏まえ、統合運用体制の整備及び陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊の体制整備は、次のような基本的考え方により行う。
統合運用態勢の強化では、既存の組織の見直しにより常設の統合司令部を創設し、統合運用に資する装備体系を検討する。
陸上自衛隊では、スタンド・オフ防衛能力、迅速な機動・分散展開、指揮統制・情報関連機能を重視した体制を整備する。
海上自衛隊では、防空能力、情報戦能力、スタンド・オフ防衛能力などの強化、省人化・無人化の推進、水中優勢を獲得・維持しうる体制を整備する。
航空自衛隊では、機動分散運用、スタンド・オフ防衛能力などを強化する。また、宇宙利用の優位性を確保しうる体制を整備し、航空自衛隊を航空宇宙自衛隊とする。
情報本部では、情報戦対応の中心的な役割を担うとともに、他国の軍事活動などを把握し、分析・発信する能力を抜本的に強化する。
これらに加え、わが国全体のサイバーセキュリティ強化に貢献するため、自衛隊全体で抜本的に強化する。
自衛隊が能力を十分に発揮し、厳しさ、複雑さ、スピード感を増す戦略環境に対応するためには、戦略的・機動的な防衛政策の企画立案が必要とされており、その機能を抜本的に強化していく。この際、有識者から政策的な助言を得るための会議体を設置する。また、自衛隊の将来の戦い方とそのために必要な先端技術の活用・育成・装備化について、関係省庁や民間の研究機関、防衛産業を中核とした企業との連携を強化しつつ、戦略的な観点から総合的に検討・推進する態勢を強化する。さらに、こうした取組を推進し、政策の企画立案を支援するため、防衛研究所を中心とする防衛省・自衛隊の研究体制を見直し・強化し、知的基盤としての機能を強化する。