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第II部 わが国の安全保障・防衛政策

2 策定の趣旨

わが国の防衛は、防衛省・自衛隊だけで行えるものではなく、国民一人ひとりの防衛政策に関する理解と協力が不可欠である。こうした観点から、防衛戦略では、「策定の趣旨」において、防衛戦略が目指すものや問題意識について、次のように国民に分かりやすく端的に示した。

まず、わが国政府の最も重大な責務は、国民の命と平和な暮らし、そして、わが国の領土・領空・領海を断固として守り抜くことであり、安全保障の根幹である。わが国を含む国際社会は深刻な挑戦を受け、新たな危機の時代に突入している。インド太平洋地域、とりわけ東アジアにおいて、国際秩序の根幹を揺るがしかねない深刻な事態が発生する可能性が排除されない。

わが国は、こうした動きの最前線に位置しており、わが国の今後の安全保障・防衛政策のあり方が地域と国際社会の平和と安定に直結すると言っても過言ではない。戦後、最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、国民の命と平和な暮らしを守り抜くためには、厳しい現実に向き合って、相手の能力と新しい戦い方に着目した防衛力の抜本的強化が必要である。この防衛力の抜本的強化と国全体の防衛体制の強化を、戦略的発想をもって一体として実施することこそが、わが国の抑止力を高め、日米同盟をより一層強化し、また、同志国などとの安保協力の礎となる。特に、2022年10月、米国も新たな国家防衛戦略を策定したところであり、日米の戦略を擦り合わせる意味でも今回の策定は時宜にかなうものである。

こうした認識のもと、「防衛計画の大綱」に代わり、新たな「国家防衛戦略」を策定する。こうした防衛力の抜本的強化とそれを裏付ける防衛力整備の水準についての方針は、戦後の防衛政策の大きな転換点となるものである。こうした大きな転換点の意義について、国民の理解が深まるよう政府として努力していく。