コラム

<解説>戦闘機の生産・技術基盤の重要性について

航空自衛隊の戦闘機に対し効果的な運用支援を行っていくためには、国内に戦闘機の生産・技術基盤を維持することが必要である。
戦闘機の日常的な整備・修理は航空自衛隊の部隊が行っているが、激しい機動を伴う戦闘機の場合、既存のマニュアルでは対応できない整備・修理も多数発生する。そのような場合、部隊は関連会社に問い合わせを行い、技術支援を受けている。F-15戦闘機を例にとると、部隊からの問い合わせは年間約1,500件にも及んでいる。
また、07(平成19)年11月、米国でF-15戦闘機が墜落し、飛行が停止されるという事故が発生した。航空自衛隊のF-15戦闘機についても同様の事故が発生する可能性が否定できないことから全機の飛行を停止した。米国からの事故調査結果の提供は限定的だったが、わが国は研究開発などで培(つちか)った独自の技術を活用し、機体強度や点検要領の評価を行った。その結果、米国のF-15戦闘機が約4か月飛行停止となったのに対し、航空自衛隊のF-15戦闘機の飛行停止期間を約2週間に抑えることができた。
戦闘機の生産・技術基盤には、戦闘機の最先端技術からのスピンオフを通じて民間の他の分野に波及するというきわめて有益な効果もある。たとえば、F-2戦闘機の開発を通じて発達した一体成形複合材技術は、今日、多くの民間旅客機に採用されるに至っている。同様に、レーダー技術は高速道路のETCや高速通信衛星のアンテナに、また、チタンボルト技術は医療用骨折時補強ボルトに応用されている。

日米が共同開発したF-2戦闘機
日米が共同開発したF-2戦闘機
 
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