コラム

<解説>次期固定翼哨戒機の開発完了について

平成24年度、技術研究本部は、海上自衛隊の固定翼哨戒機P-3Cの後継機P-1の開発を完了した。P-3Cはロッキード社が開発、ライセンス国産により整備してきたが、P-1はエンジン、機体およびミッションシステムを国産により開発した。P-1の特徴は、高バイパス比ターボファンエンジン、フライ・バイ・ライト操縦系統の採用による飛行性能および戦術情報処理、通信、捜索・探知・識別能力の大幅な向上であり、平素からの常続的な情報収集・警戒監視能力が向上する。
性能評価において、低温環境下の機能・性能および雪氷環境下の離着陸性能などを評価するため、八戸航空基地で耐寒試験を実施した。試験は最低気温時間帯となる早朝に行われ、試験員も長時間氷点下に晒(さら)されることから完全防寒態勢で取り組んだ。試験期間が限られていたため、試験条件が整わないことが危惧(きぐ)されたが、P-1の飛来を待っていたかのごとく適切な降雪があり、円滑に試験を実施することができた。
今後P-1は、わが国周辺海域の安全確保ならびに海上交通の安全確保において主体的な役割を果たすこととなる。また、国産開発したことにより、維持設計・製造・修理を国内で行うことが基本となることから、将来にわたって技術基盤の維持・強化に寄与することが期待される。

※ フライ・バイ・ライトとは、パイロットが操作する操縦桿(かん)やペダルの動きを光信号に変え、光ファイバーを介して舵(だ)面を駆動する方式で、電磁干渉に強く、実用機としては世界で先駆けてP-1で実現した。
飛行するP−1
飛行するP−1
開発の状況(耐寒試験:八戸航空基地)
開発の状況(耐寒試験:八戸航空基地)
 
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